ポリガレメンバー、どんな人?(3)
こんにちは! PolicyGarage(愛称ポリガレ)の企画広報チームです。
ポリガレのメンバーって、どんな人たちなの・・・?と気になりますよね。 今回は、民間企業でデザイナーとして活躍されている志水新さんにインタビューしてみました!
ーポリガレに関わり始めたきっかけについて、教えて下さい。
もともと、2019年から2020年夏までニューヨークのParsons DESIS lab(Parsons Design for Social Innovation and Sustainability Lab)で、公共デザインやソーシャルイノベーションという、NPO(Public Policy Lab)やNY市(NYC Civic Service Design)やアメリカ政府(Lab・ OPM)のデザイナーが『どのように公共や社会の問題にアプローチしているのか』について研究、実践していました。
ただ日本に帰ってきたとき、まだ国内では、そういった領域のデザイン実践をできる場がほとんどなくて・・・どうしようかと思っていた時、Parsonsの先輩だった橋本直樹さんに相談したら、ポリガレの津田広和さんを紹介してもらい、2~3回会って、意気投合して。 一番印象に残っているのが、日比谷公園で津田さんとランチをしたとき。そこがポリガレに関わるきっかけです。
ーなぜ、一番覚えているんでしょうか?
めっちゃ暑かったんですよね(笑)。暑い中、日比谷公園のオープンテラスで、津田さん、橋本さんと熱く話し込んで・・・。人の行動変容を扱うナッジや、データを扱うEBPMのような部分とデザインは相互に補完しあえる関係だと思いました。
そこから、NPOとして法人化するためのビジョン作成や、チームメイキングのファシリテーション・ブランディングなどをやらせてもらううちに、今に至ります。もう1年になりますね。
ー昨年までNYで公共デザインを研究されていたということですが、いつから、その分野に関心をお持ちだったのでしょうか?
大学に入ったのが2010年で、当時は「Design for the other 90%」という、デザインの恩恵を受けていない90%の人々のためにデザインを使おうというソーシャルデザインのムーブメントが起こっていたタイミングでした。2011年には東日本大震災もあり、そうしたことが重なって、デザインをやるときに漠然と頭にあったのが、ソーシャルという軸でした。(補記:「100ドルのラップトップは世界を変えようとしていたが、それはすべて間違っていた」の記事にあるように、2010年台のソーシャルデザインには多くの反省点があります)
ただ、ソーシャルって広すぎて。学生のころは、社会問題に対してどうアプローチしていいか分からなかったので、まずは目の前にある個人の小さな社会課題を解決すること決めました。それが、マイノリティの方たちのためのプロダクトのデザインです。 当時、人の生活を変え始めていたデジタルテクノロジーと全く変わっていない福祉機器を組み合わせたら面白いものが作れるかもしれないと思って、学生時代はそうした作品づくりに取り組んでいました。
視覚障がいのある方が、音楽を学ぶようなプロセスでキーボードのタイピングを習得できないかと考えて、触覚と音のフィードバックで平仮名51音の入力が学習できるキーボードを作ったり、聴覚処理障がいのある方が、一つの音に集中できるように単一指向性とノイズキャンセリングがついたイヤホンを開発していました。
当時は、いつかパブリックなデザイン、ソーシャルなデザインをやりたいと思っていましたが、日本語の書籍や文献も少なく、まだ行政や公共のデザインというものは一般的ではありませんでした。
数年前から英語の勉強を兼ねて海外書籍やレポートを読んでいると、行政や公共の領域でデザイナーが活躍している事例が、イギリス(Policy Lab)やデンマーク(Danish Design Center)、フィンランド(Helsinki Design Lab)、ニューヨークで起こっているというのを発見しました。その文脈で、Parsons DESIS labを知り、勤め先の海外研修制度を利用して渡米しました。
当時は日本語で関連する書籍は少なかったと言いましたが、日本語で検索しても全然ヒットしない中で見つけたのが、当時Parsonsに留学していた橋本さんのブログで、すごくおもしろい人がいるなぁと思って・・・メールしました(笑)。橋本さんとの出会いはそこからですね。
ーNYでの日々はどうでしたか?
人生で一番刺激的な一年であり、最も大変な一年でもありました。英語のコミュニケーションにとても苦労しましたし、本当の意味でマイノリティの気持ちがわかるようになったように思います。
コロナの影響はもろにあって、大学の研究も講義も全部オンラインになってしまいました。NY市緊急事態宣言みたいなのも出て、スーパーに2、3時間並ぶような状況。Black Lives Matterのデモもあって、夜間外出禁止の時期もありました。
一方で、夜7時になると、医療従事者の方々に感謝を示すために「音」を鳴らす習慣があって、そういう他者への感謝を表現して、団結する文化は本当に素敵だなと感じました。
ーポリガレで活動してきてどうでしょうか?
始めは、横浜市さんや鹿児島県出水市さんの貧困世帯に関するプロジェクトのアドバイスに携わりました。そこから自治体向けワークショップで、デザイン思考やグラフィックデザインを解説してきました。今後はさらにプロジェクトベースでサポートしていきたいと思っています。
一方で、デザインを行政や自治体へ本格的に導入するためには、いくつかのハードルがあるなと感じています。何が大変かというと、自治体の方々が大切にされている、「失敗しない」とか「効果が立証されている」とかが、約束できないんです、デザインって。
失敗ありきというか、素早く失敗して、学んで少しずつより良くしていく。ベストではなくベターを積み重ねていくというマインドセットなので。効果を証明しづらい。創意工夫のようなアプローチなので、既存のマインドセットや文化と少し相性が悪い部分もあります。
でも、そういう組織の文化的な問題はあるんですけど、自治体の方々はすごくオープンで、目の前の課題を解決するために新しい方法を学びたいという好奇心をお持ちの方が多い印象を持っています。 ポリガレではそういう方々が、自分のできる範囲で少しずつ改善していけるようなデザインのツールやアプローチを、提供できればと考えています。
BITのデイビッド・ハルパーンさんがおっしゃっているような、「小さな変化を体系的にテストすることで、劇的な変化を生む」ということができたらいいな、と個人的には思ってます。 デザインの考え方を活用して、個人の成功体験を積み重ねて、「デザインって役に立つ考え方なんだ」と思ってもらえる。そういう小さな変化が広がっていくような仕組みを作りたいですね。
ー志水さんのアイデアの源泉はどこからきているのか気になります。読書家のイメージもありますが。
読書もですが、いざというときに出てくることって、自分が経験したことだと思っています。一番深く考えているし、一番深く理解しているので。 だから、迷ったら今までと違う道。なるべく違う経験をするというのを心がけています。
スタートアップを頑張っている友達と一緒にやってみようとか、当時はハードウェアのスタートアップなんて日本にほとんどなかったので、すごく貴重な経験になりました。それから、デザインファームでインターンをさせて頂いたり、民間企業のインハウスデザイナー、NYの大学で研究者、そしてポリガレですね。
それぞれ違うカルチャーがあって、違う人がいて、違う考え方で世の中を見ていて。 基本的にぼくは、人がどう世界を見ていているのかにとても興味があるので、人に話を聞き、その人の考え方を学ばせて頂く、ということが多い気がします。なので、いろんな人に会って、実際に一緒にプロジェクトをやって、彼らから学んだ考え方を違う人に渡していきたいと思っています。
そんな訳で基本的に、おもしろそうで、新しいプロジェクトだったら「是非やりましょう!」って言っています(笑)。
最後になりますが、PolicyGarageで一緒に活動していただけるデザイナー・エンジニアの方を探していますので、ご興味ございましたら、お問い合わせページかFacebookよりご連絡ください。
(文・企画広報チーム 写真・本人提供)