政策起業のコツ、聞いてきました<インターンによる第1期PEPゼミのまとめ>
政策起業家プラットフォーム(PEP)の活動が始まって一年半。一番よく聞かれる質問です。
そして、政策起業に必要なことを最も熟知しているのは、霞が関や永田町に働きかけ、実際に日本の政策を変えている政策起業家の皆さんです。
そこで今回は、9人の政策起業家から「PEPゼミ」で学んだことを基に、学生インターンが政策起業にとって大事なことをまとめました。
※本記事はPEPウェブサイト上の論考を再構成したものです。全文はこちらからご覧ください。
PEPゼミとは?
PEPゼミでは実際に活躍される政策起業家の方々をお呼びし、取り組んだ政策事例についてケース・スタディをもとに解説していただいています。政策に携わりたいと志す様々な方にご参加いただき、白熱した質疑応答も繰り広げられます。
政策の立案から実装に携わるまで、どのような工夫をしたか、どこに政策を持ち込んだか、どういった方や団体とタッグを組んでいったかなど、政策起業のノウハウとTips蓄積のため、開催されています。
各ゼミの様子はハフポスト上の記事にて配信。記事一覧は下部に掲載しています。
今後開催されるPEPゼミ記事配信などについては、PEPのTwitterにてお知らせしています。是非フォローお願いします。
PEPゼミから見えてきた3つのポイント
政策起業を行う上での共通点とは何でしょうか。PEPゼミを通して浮かび上がってきた以下の3つのポイントを、政策起業家の方々の事例とともに見ていきます。
①公益に対する情熱と志
まず、政策起業に最も欠かせないのは、公益に対する情熱と志です。
例えば、業界での標準化に向けた取組を進めるヤマトの木川眞さんは、業界全体を通した「全体最適」を重視し、本来ライバルである同業他社とも手を取って社会のために活動しています。
木川さんは、以下のように考えました。
そのために行ったコールドチェーン輸送の国際標準化は、業界全体だけでなく公共の利益にも繋がっています。
また、弁護士時代に塩崎彰久さんが行ったコロナ禍の政策検証も、第一波での政策を振り返り、第二波以降への教訓を引き出すものでした。
組織の中で起こった出来事を事実として認定し、どこが問題で、だれが責任者で、どこが争点になるか。裁判や訴訟で必須となる弁護士としての専門スキルを、政府の政策検証のために用いたのが塩崎さんでした。
こうした活動は、国の政策をより良いものにするための、塩崎さんの公共心に根差したものだったと言えるでしょう。
②政策イマジネーション
二つ目は、革新的なアイデアを仲間と実現する、「政策イマジネーション」です。
柔軟に、新しいアイデアを生み出す
私達が出会った政策起業家の多くは、目的のために今までに思いつかなかったような手段を探し、新しいアイデアを取り入れていました。既存の制度の中でできることを考える、という思考法に囚われない人が、政策起業を実現しているのです。
例えば、会社やVCなどを立ち上げ、独自の研究室エコシステムを作り上げた松尾豊さん。ベンチャーでの成功を基礎研究に還元し、そこから新たなベンチャーを生み出すエコシステムを創るため、「研究は研究室の中だけで」といったような固定観念に縛られずに、ベンチャーキャピタル、研究所、会社などの様々な組織を作ったことで、松尾研究室の今がありました。
またチェンジメーカー育成のための学校を設立した小林りんさんは、従来は定時制高校向けだと思われていた制度を有効活用することで、国際標準の9月入学を実現しました。
他にも、脱炭素化社会の実現という大きな課題に「企業版ふるさと納税」を活かして取り組むヤフーの宮澤弦さんなども、今ある制度を活用、ハックし、革新的な取り組みを進めていました。
仲間を増やす、共に戦う
加えて政策起業には、周囲の協力が欠かせません。
仲間づくりにも、トップダウンとボトムアップの二種類の方向性がありました。
トップダウンの仲間づくりの例としては、経済産業省の須賀千鶴さんや認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎さんが挙げられます。
「巻き込み大魔神」と評されていた須賀千鶴さんは、トップダウンで物事を実現させるために、官僚ならではの大立ち回りで重役や政策責任者とコミュニケーションを取る一方、現場とも深く繋がってボトムアップからも味方を増やしていました。
こども宅食の制度化に向けて取り組んだ駒崎さんの場合、主催イベントへの招待を通じて国会議員に仲間を増やした結果、自民党で自発的に議連が作られるに至ったという例がありました。
一度議連ができると、定期的な話し合いや勉強会、政党内への働きかけを通じて固定的なアジェンダとなり、政策形成に繋がっていきます。そうした点で、国会議員への働きかけはとても重要です。
一方ボトムアップでは、リーダーシップ教育に携わる朝比奈一郎さんの語る「始動者」という言葉が鍵になります。多くの政策起業家は、自らが信念を持って変革をおこす「始動者」として、周囲と社会を動かしています。
フィジカルインターネットの重要性に国内でいち早く目を付け、組織を新たに立ち上げて普及に努めるヤマトの木川さんは、その最たる例でしょう。同じ志を持つ仲間をまとめ上げ、大きなプレーヤーへと運んでいくという手法も散見されました。
ただ、同じ志を持っていても、自分とは異なる意見を持つ人に出会うこともあります。UWC ISAKジャパンの小林さんは、そういう人も巻き込むためには、
と思って取り組む重要性を語りました。
最後に、仲間を増やすという言葉には、増強するという意味合いだけではなく、自らの弱点を補う、という意味合いもあります。
小林さんは、時に弱さも曝け出すことで、短所を補ってくれる仲間が集まり、強靭なチームを作ることができたと回顧していました。弱さをきちんと認め、公言することは、政策起業のコツではないでしょうか。
③アジェンダ・セッティング力
三つ目はアジェンダ・セッティング力です。ここでは特に、①課題をアジェンダ化するために段階を踏んで取り組む点と、②その中でメディアを活用する場合、の二つに着目します。
一歩ずつ、段階を踏んで
政策を起業するには、段階を設定して徐々に目標に近づいていくことが重要です。
例えば駒崎さんは、こども宅食を制度として組み込むために、「モデル作り→全国への拡大→制度化」の3段階を設定しました。最初に一つ成功事例を作り、各地の有志にノウハウを提供して広げていきます。そして事例が増えたところで政治家や官僚に働きかけ、制度作りに繋げていくのです。
こうした手法は、藤沢烈さんがコミュニティ形成支援を行う際に被災地で採用した手法とも似ています。藤沢さんは事業化と制度化という表現を用いていますが、最初に成功事例を作った後、各地で類似の取り組みを行い、国レベルでのルール作りの働きかけを行う、という流れは同じでした。
また、成功事例を自力で作れない事例でも、やはり準備と段階設定は重要です。例えばヤマトでは、シンポジウムを主催して「フィジカルインターネット」という概念を業界で広げた後、役人を巻き込んだ勉強会を開催し、物流大綱への記載に繋げています。
また須賀さんが推進したDFFTであれば、シンクタンクや役所で白書にまとめた上で、国際舞台の総理のスピーチで世論喚起していました。
メディアの役割
メディア発信も、政策起業には欠かせません。例えば駒崎さんが推し進めたこども宅食の事例では、事業開始のタイミングで記者会見を行ったり、様々なイベントを通してこども宅食の成果を報告したりと、メディアが報道できる機会を数多く作っていました。報道で取り上げられれば、多くの人や社会での関心も高まり、官僚や議員に課題を解決する必要性を伝えられます。
また、、過去の報道が活力となって新しい変化を起こすときもあります。例えば、小林さんが学校を作る上で活用した教員採用の特例は、過去に報道された熊本県での事例が土台となっています。
タイムリーなメディア発信に加え、報道を通じて社会の自らの活動を記憶させておくという面でも、メディアが政策起業に果たす役割は大きなものと言えるでしょう。政策を起業する際には、メディア戦略もしっかりと考える必要がありそうです。
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ここまで、政策起業に欠かせないポイントとして、以下の3点をご紹介しました。いかがだったでしょうか。
この文章はここで終わりなのですが、もっとこの3点について詳しく知りたい!という方は、是非こちらから完全版をご覧ください。
※リンクを押すと、PEPプロジェクトページ内に移動します。
また、今回ご紹介した政策起業家の皆さんの取り組みについて、より詳しく学びたい!という方は、是非以下のリンクからご覧ください。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
執筆・企画・編集:PEPインターン一同
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