警察官だけは逃がさん!
警察官の仕事をやっていると、中には赴任地から逃亡する警察官を目撃することがあります。
彼らは一体なぜ逃げるのでしょうか。
今回はそんなお話です。
辞めたい警察官は疑え
最近、退職代行サービスなんてものがあるようですね。
自ら退職を切り出せない人が使うとか。
もちろん警察官にも自ら退職を切り出せない人がいます。
特に警察署に配属されて1~2年くらいの若い警察官にその傾向があります。
私が警察官だった当時は退職代行サービスなんてありませんでした。
今の警察官が退職代行サービスを使うのかどうかは分かりませんが、いずれにしろ辞めたければ自分の口からその理由をハッキリ言えばいいだけです。
そして、警察組織から抜けるためには退職代行サービスは、恐らく通用しないでしょう。
というのは、警察を辞める場合、様々なことを疑われるケースがあります。
例えば急に辞めようとする場合ですね。
今まで色々厳しいことを乗り越えてきたのに、ましてや安定した地方公務員という地位を捨て、なぜ急いで辞めるのか。
何か処分対象になるような、やましい事を抱えているからバレないうちに辞めようとしているのではないか。
そういうことを疑うようです。
疑う内容としては例えば以下の様な事があります。
・業務が忙しくて処理しきれず、上司の決裁をまだ受けていない「未決書類」を隠しているのではないか。
・自宅に変な物を隠し持っていないか。
例えば、けん銃の訓練の時に使う訓練実包などや、違法物品に至るまで「良くない物」です。
・その他にも、借金で首が回らなくなって雲隠れしようとしているのではないか。水商売系や警察の監視対象組織の人間と恋人関係にあるのではないか。
等、疑えることは何でも疑います。
さて、そんな感じですから、入って1,2年の若い警察官が退職を言い出しにくいのは当然です。
辞めます、と言って終わりじゃない可能性があるわけですから。
ただでさえ、周りは恐い上司ばかりですから、後ろめたい理由がなくても言いにくい訳です。
しかし、言い出せないで逃げてしまうのはダメです。
これは、社会人として失格、という意味ではありません。
警察の制服などはあくまで貸与されたもので、今まで支給した数も記録されているので、退職時にしっかり返却数が合うかどうか確認されます。
警察の制服は悪用できますから、こっそり一着だけ手元に残されたりしたら警察組織としてはまずいのです。
ところがけん銃や警棒などとは違ってみんな制服は家に置いてあります。
ですから逃走した警察官は必ず確保して制服の返却などをしてもらわなければなりません。
もちろん正規の退職手続きもさせる必要があります。
警察官だけは逃がさん!
私が県のある中核市で警察官として勤務していた時期、3年間で2回、若い警察官の逃走事案がありました。
この中核市の場合、逃げた警察官はこの県の地理と交通の都合上、ほぼ間違いなく電車で県の政令指定都市方向へ向かいます。
逆方向へ行っても辺鄙な港町しかないから、そっちへ行く人はいません。
そこで、駅の防犯カメラなどを確認して、乗った電車を割り出し、何時何分頃に政令指定都市の駅に到着するか確認して、現地の警察官に連絡します。
逃走した若い警察官は駅で待ち構えている警察官に確保されることになるのです。
聞くところによると、この中核市では、私がいた時期だけでなく、そこから過去数年の間に他にも何度か警察官の逃走事案があったようです。
しかし、私が聞く限り、逃走警察官の確保劇において取りこぼしはゼロです。
つまり、必ず確保します。
「警察官だけは逃がさん!」という組織の意地と言って良いでしょう。
警察は組織が最優先ですから。
被疑者には逃走されることがあるんですけどね。
今回は以上となります。
お読みいただきありがとうございました。