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警察官の仕事ってどうなの?(誤認逮捕した話)

警察官時代、誤認逮捕してしまった時の話をします。

是非読んでいってくださいね。


普通のチンピラ


留置場で勤務していた時、40代の男が器物損壊罪で逮捕されて入って来たことがあります。

飲み屋で暴れて店の物を壊したんです。

チンピラ風の見た目でしたが、意外なことに前科・前歴なしで、キャバクラの経営者。

この時は特に印象に残るような奴ではありませんでした。

留置場にいた期間が短かったので私はほとんど関わることなく、結局不起訴で釈放されました。

こちらは3日に1回の当直です。

そいつが留置場にいたのは10日ほどでしたから、関わらない場合はほとんど関わることなくサヨナラします。

しかし、こいつは3ヶ月後、私が当直の日に再び留置場に舞い戻ってきました。

再入場


こいつが再び来た時も酔っ払っての器物損壊罪でした。

入場は明け方、午前5時頃でしたね。

しかし、前回よりかなり酔っ払っています。

我々と一緒に留置場内の階段を登っていると思ったら、階段をジャンプして落ちて行こうとしたりしてふざけます。

こちらは落ちて行こうとするそいつを支えているから、さながら神輿を担いでいるような状態です。

看守が3人では神輿もうまく担げないので、一般当直から1人応援に来てもらって対応します。

やがて、入場の手続きを終えました。

けっこう酔っているようなので、単独で房に入れます。

これで一安心と思いきや、そいつが房の中にあるトイレのドアを蹴り始めました。

ドア自体はいくら蹴っても壊れるようなモノではないですが、へこむくらいはあり得るかもしれません。

逮捕された不満や暴言を吐き、横になったままドアを蹴り続けています。

当時、私は巡査長で、私の上司は20代の巡査部長です。

留置場の当直は3人体制

後輩に場内を見回りしてもらい、私と上司でこいつの動静を見守ります。

酔っているので遠慮なく全力でドアを蹴っています。

被疑者はガタイが良いのですが、どうやらドアがヘコむ可能性は低そうです。

時間はもう朝7時半です。

あと1時間経って午前8時半になれば次の当直員が来ます。

交代したら急いで家に帰って爆睡です。

しかし、こういう場合、私の人生では大体最悪の展開が待っています。

器物損壊で現逮!


ところで、この留置場のトイレのには小さいがはめ込まれていました。

被疑者がトイレに入った時も顔だけは確認できるようにするためですね。

被疑者に自殺されるとしたら見づらいトイレの中が一番可能性が高いんです。

こいつは今まで寝そべりながらトイレのドアを蹴っていたのですが、急に立ち上がって壁のを手で叩き始めました。

あっ、ヤバい!と思った瞬間、窓はあっさり割れました。

これは、現行犯逮捕しなければなりません。

書類作成やらを計算すると、午後2時過ぎの帰宅が確定です。

午前8時半で交代して帰って寝たかったのに。

私と部長は色々あって仮眠は1時間くらいしか寝ていませんでした。

仕方ない。

帰って寝れば良いだけの話です。

手でトイレの壁の窓を叩き割った被疑者。

すぐに上司が房の中にいる被疑者に器物損壊罪で現行犯逮捕する事を告げます。

現行犯逮捕したら、刑事課に引致し弁解録取書などを作成しなければなりません。

私は留置場の非常ベルを鳴らし、「何事だ!?」となだれ込んで来た刑事課員に器物損壊のことを伝え、引致します。

留置場の中にいようが犯罪をすればその件で逮捕します。

それは、全く問題ありません。

留置場の中だから大目に見る、という話にはなりません。

でも、それとは別でこの逮捕、実は違法な逮捕だったのです。

私と上司は2人とも気付かずに逮捕してしまったのです。

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