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刃物現場から逃げた先輩


刃物で暴れ臨場指令


さて、今回は私が交番勤務員時代にめちゃくちゃ腹が立ったことについて書きます。

交番勤務をしているとごくまれに「刃物を持って暴れている」等の通報が入ります。それは自宅での夫婦喧嘩だったり、居酒屋のよっぱらいだったり、市役所へのクレーマーだったり様々です。

私も刃物暴れの臨場指令で何回か臨場したことがありますが、実際に刃物を持って暴れている状況を目の当たりにしたことはありません

おとなしくなった後だったり、刺した後だったりです。

しかし、この刃物暴れの臨場指令が入った時の気持ち、皆さん分かりますか?

嬉しいはずがないですよ。いくらけん銃持っていたって、耐刃防護衣着ていたって、ケガする可能性もあれば死ぬ可能性もあるわけです。

そんな恐怖の瞬間が無線の指令によって突然訪れるわけです。

勇気をくれる仲間たち


しかし、そんな恐怖をかき消して「現場へ急がなければ」と思わせてくれるのが仲間の警察官の行動です。

隣の交番の先輩や後輩、署の自ら隊、刑事課、本部警ら隊、本部機動捜査隊(略して機捜)の無線が次々入ります。

「〇〇、現場方向!」「◎◎、どこどこから向かいます!どうぞ!」

そうしゃべっている後ろでウゥーーという緊急走行のけたたましい音が鳴り始め、無線に流れます。

「みんな俺の交番の管内なのに向かってきてくれているんだ!俺が第一臨場しなくてどうする!」

勇気をもらってミニパトで現場方向へ緊急走行します。

現着すると大体道路にデカパト覆面車両が停車されていて、他の警察官が先に現着しています。

速えー!といつも驚かされますが、中で格闘中かもしれません。降りて猛ダッシュで玄関へ行きます。

そして恐る恐る中へ入ってみると3,4人の警察官に囲まれて意気消沈したおっさんがいるわけです。これが大体の流れです。

よくよく話を聞いてみると、暴れるまでには至らず、実際には包丁を取り出そうとしただけだったり、振り上げて脅しただけだったりが多いです。

しかし、指令台は必ず包丁を持って暴れている、と無線で流してきます。絶対わざとだと思うのですが、通報者が「暴れているんです」と言った可能性も否定できません。

まあ、大きく騒いで、小さくまとめた方が警察官みんなの安全のためにも良いでしょう。

先輩警察官が逃げた!


ある時期、となりの交番の先輩女性警察官と二人で2か月ほど一緒に当直していたことがありました。

私は隣の一人交番で勤務だったのですが、先輩女性警察官の上司が病気で入院していたのです。女性一人で当直はさせられないという地域統括の判断で、私がその先輩の女性警察官と一緒に当直をしていたというわけです。

この女性警察官は結婚のため、2週間後に警察を退職予定でした。そんな時、夕方、管内で刃物暴れ事案が入りました。一緒に大急ぎで臨場します。

仲間の無線に勇気をもらい、ミニパトで緊急走行!

現着!くそ、第二臨場か。機捜速えー!

しかし、中で刃物男と格闘中かもしれない。

猛ダッシュで玄関へ、玄関ドアが見えた!

「あ、耐刃手袋忘れた!ミニパトから取って来る!」と声が聞こえ、振り向くと横で一緒に走っていたはずの先輩女性警察官の背中が薄暗い中、遠ざかって行きます。

「おま、ふざけんなよ。耐刃手袋なんて、そりゃあった方が良いけど誰も使ってる奴なんていねーだろうが。結婚して辞めるからってこんなところで露骨に逃げやがって!」と言いたかったけど私一人玄関の前です。

今からミニパトまで走って先輩を追いかけるのはどう考えても違います。

中へ入ると、いつも通り警察官に囲まれて意気消沈したおっさんがへたり込んでいました。

本当にめちゃくちゃ腹立ったんですけど、特に危ない目に遭ったわけでもないので結局先輩には何も言わず我慢することにしました。

あと2週間で辞めるのに刺されたら馬鹿らしい、っていう気持ちもわかりますしね。


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元警察官日本語教師
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