交番勤務ってどうなの?(死が身近な職業)
異常事態
私が交番勤務をして、3年くらい経った時です。
初任科(警察学校)を出て半年位の後輩Yが朝出勤していない日がありました。
朝礼が始まり、地域統括官が電話をかけるように指示したので、何人かの巡査がYに電話をかけますが全く電話に出ません。
学生だろうが、社会人だろうが遅刻はもちろん駄目です。
しかし、警察官で初任科出たばかりの新人が遅刻して、電話にも出ないというのは異常事態と言ってもいいでしょう。
いや、非常事態かもしれません。
初任科を出ると次の初任科卒業生が来るまで、当直の朝、早く来て署の掃除をしなければならない決まりです。
少なくとも私の県ではどこの署もそうです。
それが朝礼が終わっても来てない。
しかも彼の先輩が何人も電話をかけてるのに電話に出ない。
警察官が先輩や上司の電話に出ないというのも異常です。
前にも書いたと思いますが、私はウンコする時もトイレに携帯を持って行ったし、お風呂に入る時は最大音量で浴室の前に置いておきました。
私の後輩でビニール袋を三重にしばってその中に携帯を入れて独身寮の風呂に入っている奴もいましたね。
「一発で電話に出ないと上司にぶっ殺されるんですよ。」と言っていました。
なぜそんなに電話が大事なのか。
まず、行方不明者の捜索や重大事件の捜査で、非番だろうが週休だろうが召集がかかることが多々あります。
また、自分が作成途中の捜査関係書類の事件に関して、その被疑者が逮捕されると書類の完成や訂正を求められ、すぐに来るように命令されることもあります。
なんせ被疑者を逮捕したら48時間以内に検察庁へ送致しなければなりませんからね。
他にも色々ありますが、ここまでにしておきます。
自分は一度、週休の日に登山をして山頂で休憩している時に署から電話が来たことがあります。
600メートルくらいの低い山でしたが、大急ぎで下山して署に駆けつけたことがあります。
そういう世界なのです。
「〇〇してなくて良かった~」
さて、そんな警察社会でYは電話にも出ず、遅刻して、そのうえ朝礼が終わってもまだ来ない。
普通の会社なら、「寝坊かな。」「何かトラブルかな。」とか考えるかもしれませんが警察組織は違います。
この状況で警察官ならきっと心に浮かび上がる2つの文字があります。
「自殺」
もちろん「あいつ自殺してるんじゃね?」なんて誰も言いませんよ。
縁起が悪いですから。
でも、心には浮かびます。
これは普段「死」というものが身近な警察官ならではの思考回路かもしれません。
事故死、殺人はまぁそんなに多くないですが、変死体、首吊り等の自殺でよくご遺体を目にします。
あと、警察官の自殺も多いです。
これは今度書きますね。
だからこういう状況下、つい自殺をイメージしてしまうんですね。
さて、けん銃を受け取ると、皆より一足早くYの上司の巡査部長が統括官の指示で独身寮へ向かいます。
やがて、無線で一報が入りました。
「Yにあっては寝坊していた模様。本職が何度もノックしたところ、起きてきました。どうぞ。」
「了解。」と答えて統括官は無線を置きます。
そして皆の前でついにあの言葉を言います。
「いや~、首吊ってなくて良かった〜。」
その場にいたみんなも同じ思いだったことでしょう。少なくとも私は同じでしたね。
今回は以上となります。お読みいただきありがとうございました。
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