交番勤務ってどうなの?④(切符紛失したら?→もちろん捜索です。)
貸与品とは
まず、貸与品について簡単に説明すると手錠、警棒、けん銃、警察手帳などは全て自分の物ではなくて貸与品ということになります。
制服や制帽も退職するとき全部返却します。
自分の物ではないので、なくしたら大変なことになります。
私が知っている限りでは警察手帳を紛失したら一発で懲戒処分の戒告が飛んできます。
警察手帳は悪用できちゃいますからね。
懲戒処分とは
懲戒処分には重い順に免職、停職、減給、戒告があります。
戒告というのは懲戒処分の中でも最も軽いものです。
警察官が何かやらかしたら懲戒処分というイメージがあるかもしれません。
しかし、懲戒処分に至らなくても、所属長注意とか本部長注意とかその前の段階で収まることがほとんどです。
だから戒告とはいえ、いきなり懲戒処分というのは非常に厳しい処分だと思って間違いないです。
ちなみに戒告を喰らうと(確か)2年は昇任試験受験の権利が剥奪されます。
そしてボーナスも2年間、約半分しかもらえません。
ボーナスが半分になるのはボーナスを構成する期末手当と勤勉手当のうち勤勉手当が2年ほど全くもらえなくなるから、らしいです。
らしい、というのは実際に懲戒処分(減給1ヶ月)を喰らった先輩から聞いた話だからです。
そもそも出世してなんぼの警察階級社会で戒告なんか1回でも喰らったら致命的です。
記録にはずっと残るので、昇任試験を受けれるようになったとしてもどこまで昇れるか怪しいものです。
警棒を紛失した後輩N
貸与品を紛失した場合、処分だけではありません。
同僚を巻き込んだ捜索が大々的に行われます。
交番で働く警察官は地域課に所属します。
3交代制なので1係、2係、3係がいます。
この係の人間が一緒に当直して街の治安を守るわけです。
貸与品を紛失した場合、同じ係の数十人が非番、週休を使って捜索にあたります。
貸与品をなくした本人は隠れたくなりますよね。
同僚、先輩、後輩、上司全員の休日を自分のせいで無くしてしまうわけですから。
貸与品以外に、交通取締りの切符を紛失した場合も捜索が行われます。
貸与品を無くすなんて滅多に無いんですが、切符紛失はよくありました。
切符はよく使いますし、装着できないですから。
私は地域課にいたのは4年程でしたが、2回貸与品の捜索に駆り出されました。
1回目は警笛(手錠の鍵がセットになったもの)、2回目は警棒です。
警笛の時はすぐに見つかりました。
本人が事故現場の交通整理で最後に使ったのが分かっていたので、その周辺をしらみつぶしに探して無事見つかったというわけです。
警棒は初任科出て2年ちょっとの後輩(以下Nとする)が無くしました。
この時は本人どこで紛失したか、全く心当たりがありませんでした。
そこで、最後に警棒を確認してから紛失に気付くまでの詳細な足取りを地域統括が聴取して捜索範囲を決めます。
聴取の結果、Nが一人でミニパトに乗っている途中、猛烈にウンコをしたくなって公園のトイレに駆け込んだことが分かりました。
その時、帯革(装備品を装着する太いベルト)を一時的に外したのです。
その公園のトイレの周辺が怪しいという事で、そこを起点にして周辺の道路や草むら、排水溝などを徹底的に探しました。
どんどん捜索を広げていってNの交番の周りの道路も念のため捜索します。
Nは苦しかったでしょうね。
休日返上で探してくれている大部分が上司や先輩なんですから。
それもうんこがきっかけで大事な貸与品を無くしたかもしれないなんて。
Nは数十人分の昼食代を全部払う、と言ってくれました。
でもそれはあまりにも金がかかるということで飲み物だけ買ってもらいました。
非番、週休を2回ずつ、計4日使って捜索した結果、見つかりませんでした。
Nが移動したところ全てを辿ったはずなのですが見つけることができませんでした。
捜索は打ち切りです。
こうなると可能性は2つです。
1.Nの記憶違いで捜索した所と全然違う所で無くした。
2.捜索した範囲に落ちていたが、我々より先に誰かが拾った。
2の場合、交番に拾得物として届けてもらえる可能性があります。
しかし、届けずに自分の物にしてしまう人もいるかもしれません。
こればかりはもう運頼みです。
その後、転勤まで1年ほど、その署で働きましたが拾得物としての届出は結局ありませんでした。
もう15年くらい前の事ですが、ひょっとしたら今でも誰にも見つからずにどこかにひっそりと警棒が落ちているかもしれませんね。
ところで、どんな処分だったか忘れましたけど、Nに懲戒処分はありませんでした。
警棒も特製ですが、警察手帳よりは悪用の可能性は低いということでしょうかね。
N、今でも頑張っているかな~。
今回は以上となります。ありがとうございました。