去りゆく猫からメッセージを受け取った話
だいぶ昔の話だ。
いつかどこかに残して置きたいとずっと思ってた。
まだ学生だったころ、親しくしていた年上の男性がいた。とても親切な人で私に好意をよせていてくれたことは薄々気づいていたけれど、私はその人に恋愛感情のようなものはなく、告白されないのをいいことに、食事したり飲みにいったりダイビングをしにいったりする少し年上の友達、という位置付けの、距離をとった関係のままでいた。
居心地がよく楽しかったけど手を繋いだこともなかった。意識的に隙を見せるようなことをしないようにしていたんだと思う。
その日、新宿のバーで飲みタクシーに乗って家に向かっていた。
少々運転が荒めだな。とは思っていた。
大通りを過ぎて家の近所のパン屋さんのあたり。急ブレーキと何かに当たったちょっとした衝撃を感じた。
停まってください!と言って慌てて降りた。
タクシーが何事もなかったかのように行ってしまってから薄暗い中、道の真ん中で横たわっていた猫を抱いていったんはじに寄せた。大きな傷などはなく血も流れてなかったけど呼吸はなく口の中をそっと見てみると歯がほとんどなく老猫だと思った。
深夜だったこともあり家に連れて帰ったけどダメだった。
一緒に飲んでいた人から無事についたかと連絡があったのでそのまま泣きながらいまあった話をした。
その時なんて言われたかは覚えていない。
とにかく自分が乗っていた車が猫を死なせてしまったことへのショックが大きかった。
そしてメールがきた。
先ほどは、助けていただきありがとうございました。私は名乗るほどではありませんが
周りの猫から〇〇と呼ばれてきた者です。
野良猫としてこの世に生きてきましたが、あなたのように優しい方にたくさん会えました。
今年は孫の顔も見ることができました。
なんの悔いもありません。
どうか自分を責めないでください。
最後に優しくしていただいて幸せに天国へ行くことができました。
あなたのこの先の幸せを願っています。
何度も読み返した。
こんな優しい人っているのかな。と思った。
そのときの救われたような気持ちをちゃんと伝えられないままだった。
いま幸せにしてますか?
わたしもあなたの幸せを願っています。
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