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《足らぬが良し》, 安村日菜子
初めて見に行く広島市立大学の卒業・修了制作展、現代表現研究領域の安村日菜子さんの作品はインスタレーションだった。
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白い展示台にいくつかの立体作品が並べられている。その立体作品が置かれている台の近くに鉛筆で立体物に対する説明が書かれている。当初はルアーに目が行ったが、これらは全て漂着ゴミであるという。
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ルアー、陶片、ライター、実に様々なものが漂着してくる。そうして集めたゴミを金継の一種である呼び継ぎを使ってひとつにしている。呼び継ぎとは、破片と破片を合わせて、重なり合いそうなところを漆などで継いでいく技法のことである。割れてしまった器に新たな景色を見出す技法だという。
作家が拾ってきた漂着ゴミ、それらを組み合わせて、違う形を見出す。漂着ゴミとひとくくりにされたものを取り上げ、例えばライター、陶片などと名付け個別化する。汎化されたものの個別化であり、更にそれらを融合させる。新たな価値を見出そうとする試みでありガラクタがアートになる。こうした取り組みは目新しいわけではないが価値創造の取り組みとしてとても面白い。
レディメイドは既製品を用いた。安村さんは、製品のライフサイクルの中で役割を取り去られたゴミを用いている。見立てによるアップデートがなされているのではないだろうか。
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