《よくできたストーリー》鈴木玲美
東京造形大学10号館の地下一階は大学院の展示スペースになっている。ここで見たのが鈴木玲美さんの《よくできたストーリー》、4枚の作品からなる大型作品で、400×300(mm)というサイズはかなりの存在感があった。
ストーリーであり、四点の連結の作品である。上段の二点と下段の二点が連続していると思われる。右側の画面は上下ともに顔から足がでているキャラクターが描かれている。ここで、それぞれの共通点から上下と左右の接続があるのだろうと想像する。
4コマ漫画を想像するが、どのようにストーリーを辿ればいいのか分からない。左から右か、右から左か。そうしたことを考えること自体がナンセンスなのかもしれない。画面の動きは縦横無尽であり、どのような読み方でもストーリーが成立するのだろう。左側の画面はダンスを楽しむようであり、右側の画面はそのダンスへ視線を促すようでもある。
見れば見るほど分からなくなる。分かろうとすることこそが無意味なのかもしれない。それにしても左上の人物の躍動感、そこから展開する動きが画面全体に行き渡る。グルグルと回転する。
ここまで作品と対話する。これがよくできた、ことなのだろうか。
他にも作品が何点か掲載されており、リズム感のある画面が心地よかった。
小金井アートスポットで「ジャム」展を訪問した際に鈴木さんの作品を見ていたことを思い出した。
ZOKEI展の写真が流れてきて、鈴木さんの作品の前で絵と同じポーズをしている人が多かった。その様子を見てこれはミームだと思った。撮影可能になった美術館などで記念撮影をする。絵は背景なのか、壁紙なのか、そうした疑問が投げかけられることがあるが、鈴木さんが見せた絵画の鑑賞者の反応は、SNS時代におけるひとつの在り方をしめしているようにも思えた。
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