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『ボイス+パレルモ』@豊田市美術館 鑑賞日記

ゼミの同級生二人と豊田市美術館のボイス+パレルモの展覧会を見にいった。緊急事態宣言の中での移動、ボイスについては色々なテキストがあり、今更僕が何か書くことは見当たらないと思った。なので、今回の鑑賞について日記としてテキストを残しておこうと思った。


副業のために大阪に行く。毎日4桁の感染者を出していた大阪、商業施設は休業し、シャッター街の中、仕事で出なくてはいけない人と思われる人達があった。そこまで人流は少なくないけれど、無言で移動している人達、悲壮感というよりは忍耐といった空気感があったと思う。そうしたことを副業のクライアントと話をしたら、大阪は真面目なので、そうした指示に従うということだった。

羽田空港第二ターミナル、ほぼ無人の出発ロビーに設置された《Crowd Cloud》を思い出す。しばらく作品が奏でる音を聞いていた。

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19時過ぎ、大阪で宿泊しようかと思ったけれど、十分に移動できる時間、名古屋に宿を取ることにして、大阪から名古屋に移動する。初めて近鉄特急に乗る。デラックス車両の追加料金は500円くらい。せっかくの機会だから利用してみた。

新幹線なら新大阪から50分で名古屋に到着する。近鉄特急の場合は2時間半かかる。料金は2000円くらい安い。どうせお店も営業していないでしょ。

難波を出発すると、停車駅が多いことに気がついた。長く走っても40分くらい。これほど停車するのなら時間がかかるのも納得できる。難波で買った駅弁をどこで食べるか、少し悩んだ。

すれ違った近鉄特急も含めてデラックス車両を利用しているのは女性のみだった。数は少ないものの、男性客は通常の特急席に座っており、追加500円のデラックス車両を使っている人はなかった。移動時間の捉え方の違いだろうか。19時過ぎに難波から名古屋に移動する人の、それぞれのコンテキストを少し想像した。

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名古屋に到着したのは22時過ぎ、名駅近くのホテルを特急から予約しておいた。ホテルに移動する途中に警察官数十人に取り囲まれている老人、通常と変わらないように営業している居酒屋、路上で騒ぐ若者、赤ら顔の白いシャツにスラックスの男性グループ、普段の日常な感じがあった。チェックインした後で、そうした町に入り、久しぶりの生ビールを飲んだ。

翌朝、名古屋モーニングのためにPigEonに寄った。大音量のテレビ、画面の中央に焦げたような跡がある。モーニングを所望しようとしたら、ホット?という呼びかけがあり、それに頷いた。NHK の痔の特集、アナウンサーの顔のあたりのこげ跡が、フランシス・ベーコンみたいな映像を作り出していた。コーヒーの値段でモーニング。トーストと茹で卵と寒天とフルーツ。

客層から、テレビは大音量にしなくてはならないのだろう。円頓寺商店街にはアイシェ・エルクメンのピンク色のロープがそのままにかけられていたように思う。七夕飾りをするためのロープなので、常設されているけれど、ピンク色のままがいい。大分色は抜けてきたみたい。

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豊田市に到着すると、美術館で待ち合わせとしていたが、同級生と駅で会えた。電車の本数が限られているから当然のことと言えるかもしれない。そして、歩き方で、すぐに僕のことを認識したという。

歩き方による個人の識別、つまり認証方法もあるけど、そこまで特徴的な歩き方なのか、このように指摘されるのは初めてではない。名古屋で働いていた時の支社長からも僕の歩き方は特徴的ですぐ分かると言われた。こうしたところにもアイデンティティがあるのだと思い、いつの日か、撮影して検証してみようと思った。


あいちトリエンナーレ以来の豊田市美術館、美術館の前の坂道は、北九州美術館に向かう道に似ていた。美術館の入り口の高台から市内を望められることも似ている。

《ユーラシアの杖》が提示された最初の展示室、Lの字の柱が四本、木にフェルトを貼ったもの、柱の一つに金属の棒が添えられていた。その展示室内で提示されていた映像作品では、ボイスが柱を立てかけている映像が確認できた。重そうに見えるが、実際のところどうなのだろうか。白黒映像だったことと、そうした重そうに立てかける仕草から、これは鉄骨のようだと感じた。

次の展示室は、パレルモの絵画作品が提示される。見ていると引き込まれるような、思索の渦に巻き込まれていく。続く部屋に提示されているボイスのフェルト、布による平面作品と続くにつれて、そうした作品に現れるなんとも形容し難い存在感に圧倒される。

カスヤの森で見たkunst = KAPITAL の写真があった。

ポスターで見るよりも鮮やかであり、大判であり、その存在感にしばらく佇んだ。マンモスの骨、その前に立つボイス、そして上面に書かれた言葉。パフォーマーとしてのボイスについて、その後の展示で学んだ。

パレルモがニューヨークに移り住んでからの作品の部屋、最後の展示室であり、金属を支持体とした抽象画の迫力に圧倒された。常設展もボイス+パレルモ展に接続するかのような提示、埼玉にも来る予定だけど、豊田市で見る意味が、こうした所にある。


おおよそ2時間の鑑賞、ボイスとパレルモの作品の後で、美術の道を歩むというのは、茨の道を歩むようなものではないか。それでもなお、苦難に向かう。そうしたアーティストへのリスペクトは底を知らない。


ゼミ生二人との鑑賞体験が良かった。作品について話をすることと、それぞれが考えていることを交換すること、三人のうち二人は既に修士課程を修了しているが、もう一人は今年修士論文を書き上げねばならない。一人で研究するよりも、複数人で研究する。その方が絶対に実りが多い。

大抵の展覧会は一人で鑑賞に出かけているが、日程が合うようなら、ゼミ生をもっと誘って一緒に観に行くべきと感じた。


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Tsutomu Saito
いただきましたサポートは美術館訪問や、研究のための書籍購入にあてます。