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『無人配達』立花光
京都市立芸術大学の作品展は新しいキャンパスに移ってから二回目になる。ピカピカだったキャンパスは、いくらかエージングされたように見えた。京都芸術大学で松下みどりと合流し、作品展を見て回る。
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立花光さんの『無人配達』は、現代社会における人々の非接触性と匿名性を巧みな空間演出で表現した作品である。広々とした展示空間に適度な間隔で配置された台座群は、儀式が行われるかのような厳かさを醸し出している。その上に配置された段ボール箱は、並べられた台座の厳かさと対照的であり、滑稽に感じられる。
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各箱に開けられた丸い覗き穴は、鑑賞者を覗き見る行為へと誘う。その穴を通して見える風景―駐車場、倉庫、エレベーターホールなど―は、一見すると写真のようでありながら、実は1/50スケールの模型である。日常の風景が持つ「なんでもない」質感を効果的に表現することに成功している。片目での視認を強いられることで、これらの日常的な空間は独特の存在感を帯び、見慣れた風景の持つ違和感が浮き彫りになる。
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段ボールに貼られた匿名配送のラベルは、作品のコンセプトを端的に示唆する。現代の物流システムにおいて、商品は人手を介することなく、受け取り場所に置かれていく。そこには対面のコミュニケーションが存在しない。しかし、覗き穴を覗き込む鑑賞者の姿は、同時に他者の視線にさらされることになる。この二重の視線の構造は、監視社会における私たちの立ち位置を静かに問いかけているようだ。
作家は、非対面性と監視の共存という現代社会の逆説を、箱の中の無人の空間モデルと覗き見という行為を通じて、見事に具現化している。
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