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《月桂》, 松延怜亜

佐賀大学の卒業・修了制作展を見に来た。京都から始まった卒展巡りも佐賀で一段落になる。佐賀大学との縁は4年にもなり、キャンパスも(芸術系に限れば)どこに何があるのかも把握できた。

《月桂》, ©松延怜亜

松延怜亜さんの作品《月桂》は、暗転したギャラリースペースで展示されていた。プロジェクターで映像を投影するが、プロジェクターの前には根巻き苗の金木犀が置かれている。金木犀に金木犀の映像を投影している。風に揺れる金木犀、手前にある金木犀もそうだが、花はなく匂いはしない。これが何の木なのか、最初にステートメントを読まなかったら分からないだろう。花は、それほどまでに個性を表すのか。

部屋に入る扉に貼られたステートメントには、金木犀は匂いがしなければ、その存在を気付かないだろうとあった。強い香りを放つ金木犀の花が咲いたら、その花の姿を探すだろう、ということに思いが及ぶ。そういえば沈丁花はもうすぐ花を咲かせるだろうか。

では、なぜ金木犀なのに月桂なのだろうか。

松延さんに話を聞いたところ中国の伝説に巨大な金木犀の木が月にあるという。月桂樹は、もともとは金木犀のことを表していたという。間違って言葉が伝わったということだ。

翻訳と記号の不思議な関係性にも興味がいくが、長い年月をかけて間違いが真実になってしまったという事実に思いをはせる。

ピエール・ユイグが、新しい伝統行事が欲しいという村からの要望に基づいて、祝祭を企画するというプロジェクトだった。村長の挨拶から始まり、コンサートを行い、パレードもあり、最後は食事会を行う。そうした祝祭をアーティストが、地域の風習を取材するという観点で映像作品とする。フィクションを撮影しているこの状況はノンフィクションか。

「George Baker, An Interview with Pierre Huyghe, October Vol. 110, Autumn, 2004 読書メモ 《Streamside Day Follies》」のnoteからの引用


松延さんは卒業制作の作品も見ていた


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