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《あの日No.3》亀井佑果

亀井さんの作品は乾さんの作品の近くで展示されていた。サイアノタイプを用いた作品が数点展示されていた。

展示風景, ©亀井佑果

壁面に額装された作品が掲げられ、台座にはアクリル貼りした作品が並置されていた。

壁面の作品はすべて”あの日”を冠して、あとはナンバリングされているのみである。

《あの日No.3》, ©亀井佑果

この額は厚さがある。アクリル板を三枚重ねて入れられるようになっており、額の上側に切れ込みが三つ確認できる。
一番奥にサイアノタイプを入れ、前面の二枚にはアクリル絵具でドローイングした透明のアクリル板が入れられている。額はエイジングしたような風合いが与えられ、サイアノタイプのブルーの画面と合わせてノスタルジックな感情を想起させる。

作家は、紙芝居のように作品を作りたかったという。パラパラと入れ替わる場面、そこに乗せられる"おはなし"、表面のドローイングは、それを見ていたときのことを留めるかのような痕跡であるだろう。記憶を暗喩させている。水のような痕跡を見たとき、脳脊髄液を思い出した。

生物の体の環境を一定に保つしくみのことを恒常性といいますが、ヒトも含めて生物にとって体内環境は、「変わらないこと」が重要です。 約800年前、常に流れ続ける河の流れを見て鴨長明は「無常観」を発想しましたが、現代の生物学が、脳脊髄液が常に流れて入れ替わることが脳の「恒常性」に重要であると発見したのは、逆説的でじつにおもしろいではありませんか

「毛内 拡 「脳を司る「脳」 最新研究で見えてきた、驚くべき脳のはたらき」 読書メモ」 の引用より

また、フロイトが詩人はいとも簡単に真理に辿り着くということも想起する。サイアノタイプによる一回性は、脳の記憶の可塑性にも言及する。

ここで乾さんのテキスタイルの組織そのものを見せるという点と連関した。一回性を見せるということの同時性、同じキャンパスで学んでいたからこそだろうか。同時性といえば、最近サイアノタイプの作品をよく見かけるようになった気がする。亀井さんは、サイアノタイプの青がビビッドに過ぎるので、少し調整しているという。確かに亀井さんは日本画を学び、素材研究で有名な先生の指導を受けていた。


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Tsutomu Saito
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