フィンランドの自転車旅1995

18歳の夏 同級生のティーナと自転車旅に出かけた。私達が住んでいたフィンランドの西側の群島地帯から オーランド島まで。

ティーナとすごく仲良しだったわけじゃないけど
夏休み前のある時突然誘われた。

ママチャリを借りて走りはじめてすぐに
ちょっと嫌な予感がした。キョロキョロ
最初のスーパーで食材を買ったんだけど一瞬帰りたくなった
想像以上に坂道が続いてた。しかも1坂がめちゃくちゃ長い
ティーナはサイクリング自転車だったから
ついて行くのがなかなか大変。
インターネットがない時代。
地図とフェリーの時刻表片手に。

白夜の夜をずっと走る
森の中に白いシーツが横たわっていた。
私「あれは何?」
ティーナ「宗教的なものだよ」
わたしはそれは死体なんだと思って
すごく怖かった。
あれはなんだったんだろうか。
けれどあれが死体だったとしても
なんだか自然に思えた。
それくらい 街でも村でもない
ただひたすら森のなかだったから。

この時夜中の2時くらいに 島と島を繋ぐフェリーに乗った。自転車を降りて私達だけを乗せた無人フェリーは定刻になると動き出す。

波の音
エンジンの匂い
フェリーの金属音
夜中なのに鳥が飛んでいて不気味だった。
私達は何を喋ってたんだろう。
無口な私達。
ただ とにかく素晴らしい旅だった
開け方キャンプ場に着いたけど閉まってた
「朝になったら言えばいいよ」
ティーナはそう言ってキャンプ場に小さなテントを張った。

その日は2人で缶詰を直火で温めて食べた。
なぜかベビーフードだったけれど美味しく感じた。
薄暗いテントの中 ティーナは分厚い本を出して読んでる
「何の本?」と聞くと医学書だと言った。
ティーナはドクターになる夢があったんだ。
その横顔を眺めながら わたしはゴロゴロして
眠った。

今だったらこんな旅できないかもしれない。
ごはんだって絶対違うもの持ってく。
だけどだからこそ素晴らしい旅だったんだ。
18歳の私は今よりできない事もたくさんあったけれど 今よりしなやかで柔軟なところもあった。

そういうところが好きかもしれない。
そういうのをまた思い出して大事にしたい。



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