#コロナエンブレムについて

 東京五輪エンブレムと新型コロナウイルスを掛け合わせたデザインが議論を呼んだ。
 問題となったデザインは、日本外国特派員協会の月刊会報誌「NUMBER1 SHIMBUN」の4月号表紙に掲載された。市松模様を丸く描いた五輪エンブレムを、ウイルスに見立てていくつもの突起をあしらったデザインである。

 デザインを手掛けた英国人デザイナー、ポセケリ・アンドリューは「五輪延期が決まった途端に国内感染者が急増し、人々は疑念を抱いた。日本をおとしめる意図はなく、五輪と新型コロナを風刺的に描いたものだ」としている。

 大会組織委員会は五輪エンブレムの著作権侵害を訴え、デザインの取り下げを要求した。

 特派員協会のカルドン・アズハリ会長は「報道や表現の自由についてではなく、あくまで日本の著作権法上の問題として取り下げる」と表明し、あっさり白旗を揚げた。

パロディー作品はどこまで許されるのか。

 著作権法は、他人の作品を勝手に複製したり、変形したりすることを禁じているが、パロディー作品は元の作品を使って、批評や風刺を伝えることを目的とするため、元の作品の一部複製や変形が避けられない。

 フランスの著作権法は「パロディー」を認める規定がある。アメリカの著作権法にも、公正な使用なら許可を受けずに認められる「フェアユース規定」が存在する。

 しかし、日本の著作権法には、こうした規定がない。このため、日本ではパロディー作品は認められにくい状況である。ただ、元の作品の「本質的特徴」を使っていないと判断したり、著作権法が認める「引用」の範囲内とみなせば、パロディー作品の容認も可能だとする見解もある。

 今回のデザインは、著作権侵害に抵触しそうな事例だが、風刺意図が明確であり、全く異なる印象を与える表現で、別の作品とみなして著作権侵害にあたらないという解釈もできる。

 社会風刺や政治風刺といった批評や論評の自由を封じることは、本来の著作権保護の役割ではない。今回の一件が、風刺に対して寛容な態度をもたらす良い機会になったはずだが、情けない。

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