見出し画像

就職面接と『間』

                 2010/1/13  No.31の便りを改変

★面接場面でのこと

 学校で3学期といわれるこの時期は、学生たちが浮足立っているように見えます。就職や進学で毎日がバタバタ。スクールカウンセラーの相談でも、それらの話題をよく聞きます。

 ある学生が面接を受けた時のことを教えてくれました。

 面接中は聞かれる内容を考えて準備していたので、なんとかこなせていた。けれど最後に面接官に聞かれたのが「自分の長所と短所を言ってください」だった。『自分の長所』は聞かれるだろうと用意していたけど、『短所』は用意していなかった、そうだよな、長所があれば短所だよ。なんで考えてなかったんだろう、どうしよう…! 準備していた長所を語った後には、焦ってしまって何も出てこない。

 沈黙が長く感じられたとき思わず口をついて出たのが、「こんな風に突然のことに弱いところです」だったという。面接官は「プッ」って笑ったのだそうだ。 「不安だったけど、笑ってるし、まあいいか…って思って」ということがあったそうです。

 面接についてのノウハウ本を読むと、『沈黙は絶対ダメ!』と書いてあるものもあります。面接官はどんな質問に対しても応えることができるかという『対処能力』を見ているのだから、困って沈黙してしまう、ということは、「対処能力がない」という風に判断されるということらしいです。

 でも質問に答えようとする学生を見ている間、面接官も、頑張っている姿を見て、どこか優しい気持ちになっていたんではないでしょうか。沈黙の後に、やっと絞り出した反応も的確で、その言葉のいさぎよさに、好感が持てたのかなとも思いました。
 堅苦しい場面であっても、気持ちを通じ合わせるような瞬間があること、印象深く残りました。


★コミュニケーションの『間』

 会話は言葉の内容ではなく、言葉のない『間』とか、タイミングも大事なのかもしれないな、と思っていたときに、「間のとれる人 間抜けな人」森田雄三著 祥伝社 という本に出合いました。
 イッセー尾形さんの演出をされる方の著作なのですが、コミュニケーションについて書かれています。


 その中で、『コミュニケーションを取ろうと思うことは、関係がないところから関係を作ろうとするのだから、どこかしらに無理が含まれているものだ。』という言葉がささりました。
 コミュニケーションにはつきものの『無理』が、多くの人にコミュニケーションの苦手意識を作るもととなっています。

 コミュニケーション場面で困っているときは、私たちは困っているという態度を見せないことが多いです。目線がウロウロしたり、相手を嫌だと思ってしまったり、困っている姿を見せないためにひたすら自分の話ばかりをしてしまったり・・・。

 著作の中には、『困ることを極端に拒否する人の話は自慢話か説教になる』とありましたが、なるほど、そうかもしれません。私たちは意外と、困ることを避けよう、避けようとしながら、生きているのかもしれないですね。
 最初の話の中でも、困っていることがわかると、けっこう優しい気持ちになって、聞いてあげようとしてくれることは多いようにも思います。

 本当に「この人とコミュニケーションを取ろう」というときには、「困っている姿を見せてもいい」、というちょっとした覚悟のようなものがあると親しくなれるのかもしれません。それが気持ちを通じ合えるような『間』を作りだすのかもしれませんね。

                              ゆかり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?