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「エルヴィン、悪いけど席をはずして欲しい」
  ハンジが提案したのは催眠療法。ヒプノセラピー。
 催眠状態に入って自分の内面と向き合いながら、悩みやストレスの原因を探ったり、解決の糸口を見つけたりする療法。現実ではエルヴィンは目の前にいて、巨人はもういない。命を常にかけている極限状態が普通だった頃とは大きく違う。死が隣にいた頃とは精神状態やストレス耐性も勿論違う。
 「顕在意識」と呼ばれる起きている状態。それに対する「潜在意識」は普段はほとんど自覚していない意識を言う。ヒプノセラピーで催眠状態に入ると、精神状態になり、この潜在意識にアプローチしやすくなるらしい。
「いい?リヴァイ、目を閉じて。3つ数えるよ」
3…、
2…、
1…、
「何が見える?」
「…巨人の群れ…腕のないアイツ……飛んでくる石の…っあ…っ、あぁぁっ」
「リヴァイ!戻って」
 ハンジが手を叩く、大きく肩で息をするリヴァイの目から大粒の涙が零れた。
「俺が…「死んでくれと」…アイツに…アイツは俺に礼を…救えたのに…俺はアイツじゃない…他の…っ」
「落ち着いて、エルヴィンは生きて、隣の部屋にいる。貴方に手を上げたと悔いて、私を呼んだ。…会いたい?」
 リヴァイは弱々しく首を振る。しかし、その拒否に「会いたいけど会えない」という気持ちが揺れている。エルヴィンの優しさに縋ってはいけないと頑なに思い続けているのだ。
 生きづらい2人だなぁ。ハンジは思った。
「…ねぇ、あげちゃいなよ。エルヴィンに、命も心も体も。それで気が済むまで彼の事しか考えないでいればいい。エルヴィンはそれでいいって言ってるし、彼だって「貰う」って言ったんでしょう?その責任はある」
 

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