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山に差す朱色の斜陽に、秋を感じた話

月日が過ぎるのは早いことで、ついこの前夏が始まったと思えば、あっというまに9月だ。

夏の終わりを上手く割り切れていないのと同時に、心は秋を待ち望んでいる。

 夕方の山に差す光は徐々に朱色になってきた。口紅も陽の光も「さす」と表現されるが、山を染める夕日はさながら紅をさしたように鮮やかだ。でも、少しだけ夏の青々しい草木に反射する黄金色が恋しい。

日を追うごとに早くなる日暮れ、いつの間に蝉の声は消えて、赤蜻蛉が飛び始めた。

秋はもう、すぐそこに。


 ちはやぶる神代も聞かず竜田川
           からくれなゐに水くくるとは


在原業平もきっと私たちと同じ景色を見ていた。
1000年以上前の人も四季の織りなす美しさに心動かされたのだ。
文明も生活も全く異なる今と昔で、人の心は変わっていない。なんと感慨深いことであろうか。

きっと1000年後も人々は四季に美しさを見出すことができる。季節に陶酔する心地よさを知っている。 
桜の芽吹くに春を聞き、高い青空に夏が映る。少しの肌寒さに秋を感じ、静寂に降る雪に冬を見る。

感動とは人間にだけに与えられた特権だ。 
人生の背景は四季が彩っている。

山に差す朱色の斜陽に秋を感じた話

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