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あなたに会いたくて

お題

「うわーん、だれかたすけてー!」   
と、その時、そこに現れたヒーローとは?

______

「困った時は、いつでも電話して下さいね」
あの時、彼はそう言って微笑んでくれた。


一目で恋に落ちた。
あの笑顔が、どうしても忘れられない。
私は彼からもらった名刺に書かれた番号を、携帯電話の1番に登録している。


「・・・もしもし。あのね、今困ってるの。助けて!」
「どうしました?」
知り合って間もないせいか、やや他人行儀な口調。どうやら彼は仕事中らしい。
「車のドアが開かなくなっちゃったの!キーを中に入れたままロックしちゃって・・・」
「・・・今、どの辺りですか」
私が今いる場所を説明すると、彼はしばらく考えるように黙ったあと、
「分かりました。すぐ行きます」
と言ってくれた。
「ありがとう。待ってる」
やっぱり彼は優しい!
私は自分の幸せをかみしめながら電話を切った。

約束どおり、彼は20分も経たないうちに、私の待っている場所まで駆けつけてきてくれた。
慣れた手つきで、あっという間に開錠してくれる。
「・・・はい、オッケーです」
彼の手際のよさに、私は思わず拍手した。
「ごめんね。こんなつまらないことで呼び出したりして」
お礼にお茶でも、と誘ってみたけれど、残念ながら、彼にはまだまだ仕事が残っているらしい。
優しい笑顔で、やんわりと断られてしまった。


「・・・でも、また困った時は、いつでも呼んで下さいね」
「うん。今日はほんとにありがとう!」


自分の乗ってきた車にそそくさと乗り込んで、来た道を戻っていく彼。
・・・ああ。
今度彼に会えるのは、いつだろう。


別れた瞬間に、もう切ない想いが募る。
いつも忙しい彼に会う方法は、ただ一つ。


「もしもし、今度はバッテリーが上がっちゃった。助けて!」


電話一本でいつでも駆けつけてくれる、私の大好きな人。


彼はJAFのお兄さん。

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yotsuba siv@xxxx
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