"Eve"r ”Eve"r after #2021クリスマスアドベントカレンダーをつくろう
「今年も中止やねんて」
「何が?」
「決まってるやん、ドイツ祭り」
「ドイツ祭り?あー、梅田の」
「そう。スカイビルのドイツ祭り」
「クリスマスマーケットのことやんな。言い方でだいぶ印象変わるけど」
「去年も中止やったのに、今年もやらへんなんて」
「まあしゃーないよな。このご時世やし」
「私、あれめっちゃ飲みたかったのに」
「あれって」
「ほら、色んなスパイスが入ったあったかいワイン」
「グリューワインか。毎年行ってるのに全然名前覚えてへんな」
「名前なんかどうでもええねん。その何とかワイン、今年は絶対飲もうと思ってたのに」
「ワイン買うてきて家で作ったらええやん」
「ちゃうねん!寒い中で飲むからおいしいねんて。家で飲んでも別に楽しくない」
「そんなことないって。ネットで調べて、俺が作ったろか?」
「ほんまに!じゃあ、あの専用のマグカップに入れてな」
「専用って、あの黄色いカップのこと?」
「そう。初めて一緒に行ったとき会場で買ったやん。専用マグカップ持って行ったらワイン安くしてくれるからって」
「それで普段しまい込んで大事にしてるんやな」
「そうそう。大阪城のクラフトビールフェアの専用グラスも、ここ一番の時にしか使わへんようにしてる」
「さすがやな。呑ん兵衛の鑑やな」
「でもワインのあてがないわ。大っきなソーセージ」
「それは俺が買うてきて作ってくれたらええのにな、って遠回しなお願い?」
「なかなか鋭いね」
「・・・あんな本格的なん、近所のスーパーに売ってるかな」
「今回はシャウエッセンとかアルトバイエルンはなしで!」
「何で。どっちもおいしいやん」
「どうせなら本場っぽいやつが食べたいやんか」
「・・・明日、会社の帰りに成城石井寄ってみるわ」
「もしもし、私!」
「分かってるけど。どないしたん?」
「今、アナタの会社近くのスタバに来てる!なあなあ、もうすぐ仕事終わる?」
「終われんことはないけど。えー?朝、何も言うてなかったやん」
「サプライズやんか。もうすぐコーヒー飲み終わるねん!待ってるからはよ来てな」
「・・・強引やなあ。分かった、あと10分くらいで出るわ」
「めっちゃきれーい!これが見たくて、わざわざ地下鉄でこっちまで出てきてん」
「迎えに来てくれたわけじゃないんや」
「まあそれもあるけど。きれいやん」
「俺は毎日帰りに見てるから、あんまり感動ないけど」
「なんでやのん!御堂筋がこんなにキラキラしてるのに!ロマンのかけらもないなあ」
「まあきれいやとは思うけど」
「これぜーんぶうちらの税金やと思ったら感動もひとしお!」
「なんかトゲのある言い方やな」
「ええの!福利を享受するのは納税者の権利やもん」
「まあ、ふたりで一緒に帰るんも久しぶりやしな」
「結婚してからこういうデートっぽいこと、いっこもしてへんしな」
「はいはいすんません」
「なあ。せっかくやから、難波まで歩いて帰ろっか」
「マジで!結構距離あるで。歩けるん?」
「大丈夫。今日はぺたんこの靴はいてきた!」
「用意周到やな」
「ついでになんばCITYの成城石井も寄ってこ!ワインとソーセージ買わな」
「クリスマスイブはあさってやで」
「だからそれはイブまで取っとくの!せっかくこっちまで来たんやし、今日はなんか食べて帰ろ!」
「そんなら久々にあそこ行こか。初かすみ」
「ええセンスしてますな」
「熱燗とおでんのイブイブイブっていうのもシブいやろ?」
「クリスマスがどんどん遠ざかっていく気もするけど」
「まあええやん。ほな、行こか」
「うん」
「こらこら、難波はそっちちゃうで!」
「あれ、そうやったっけ」
「逆方向やん。そっち行ったら梅田やで」
「都会の道は難しいなあ」
「御堂筋で間違う方が難しいと思うけど」
「北に行くか南に行くかの二択やのになあ」
「方向オンチは相変わらずやな。ほら。手出して」
「何?おこづかいでもくれるん?」
「無理やりボケんでええから。俺の気が変わらんうちに、さっさと手ぇ出す!」
「手ぇつなぐのも、久々やな。なんか照れるわあ」
「ごちゃごちゃ言うならつながへんで!」
「イヤ、つなぐ!家帰るまで離さへんから」
「なんかバカップルみたいやな」
「そう!おでんよりアッツアツやで」
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・・・・・・
ごぶさたしています(照
ずいぶんん長くここに書くことから遠ざかっていましたが、またぽつぽつと言葉を連ねていきたいと思えるようになってきました。
ちょうどよいタイミングで、百瀬七海さんが今年もアドベントカレンダーを企画していることを知り、ぜひ参加させて欲しいとお願いしました。
いざ手を挙げてはみたものの、書けるかどうか正直自信なかったのですが。ものすごく身近にいるお酒好きな誰か(私?)の限りなく実話に近いフィクションを。・・・ふう、なんとか締切は守れた!
毎年楽しみにしている梅田スカイビルのクリスマスマーケット、来年はあるのかな。行けるかな。行きたいな。
大きな口を開けて笑って、ワインを飲んで、ソーセージを頬張って。
そんな当たり前だと思っていた日常が当たり前じゃなかったことを知った今だからこそ、小さな幸せを逃さずにいたいと思います。
みなさま、どうかステキなクリスマスをお過ごしください。
明日の担当は、七屋 糸さんです。わくわく。
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