2時間の恋人

なんてことない会話から
ふたりで映画を観ることになった
下調べもせず
時間帯だけで選んだその作品は
思いがけず当たりだった
エンドロールまでしっかり見届けて
名残惜しい気持ちで席を立つ
ストーリーの余韻を壊したくないから
入れ換えで混みあうエレベーターを避けて
ふたりで八階分の階段をおりた

どちらからともなく手をつなぎ
人気のない踊り場で立ち止まり
何度かそっとキスをした
そんな気分になったのは
きっとさっき観た映画のせい

ロビーのざわめきは
少し浮わついていたふたりを
あっさりと現実に引き戻す

どちらからともなく手を離し
ただの友達に戻って
この後どうしようか、なんて
互いに言いながら
ありふれた居酒屋に向かう

お互いほどよく酔ってから
この後どうしようか、なんて
ふたりは決めかねながら
店をでた後少し歩く
駅とは反対の方向へ

どちらからともなく手をつなぎ
人気のないガード下の暗がりで立ち止まり
何度かそっとキスをした
そんな気分になったのは
きっとさっき飲んだお酒のせい