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空の下で、あなたを想う #リライト金曜トワイライト

台風が通り過ぎた翌朝の空気はが少しひんやりしていて、夏がまた一歩遠ざかったことを知りました。
駅までの道、途中にある月極め駐車場の入口。
「空あります」と書かれた貼り紙を読み間違えて見上げた空は、とても高くて、とても遠くて。


吸い込まれそうな青色の中に、わずかに見える飛行機雲を見つけて、ふとあなたのことを思い出しました。
はかない一筋のラインを残して飛んで行った飛行機はどこに向かったのでしょうか。
そこにはどんなひとたちが、どんな思いで乗っていたのでしょうか。
小さく見えなくなっていく機体を地上で見送ったひとたちは、どんな思いで手を振っていたのでしょうか。


あのとき。
空港まで見送りに来てくれたあなたは、私の目をなかなか見ようとしませんでしたね。
当たり前のように持っていてくれた私の荷物を、チェックインの時間になってもなかなか返してくれませんでしたね。

あのとき。
あなたはきっと気づいていたのでしょう。
私の目に、あなたがもう映っていないことに。


あのとき。
ニューヨークに向かう飛行機の中で、私は未来を思い浮かべていました。
どこまでも明るくて、どこまでもまっすぐな、私自身の未来を。


若さとは残酷ですね。
そして、その残酷さに気づかないくらい、まばゆく輝いているものですね。


札束が飛び交い高い物から売れてゆく、華やかな、でも虚ろな時代でした。
初めて手がけた企画が成功して、そのことをきっかけにさらに大きな仕事が次々と舞い込んできて。
忙しくて、その忙しさが連れてくる疲労にも気づかないくらい、心も時間に追われていて。


仕事しかない人生なんて嫌だな、あなたがそう言ったとき。
私は仕事したーって思って死にたいよ、って答えましたね。
もしかしたら、あのときに。
私たちはもう、終わっていたのでしょうか。


いつの間にか、飛行機雲はすっかり空に溶けて、見えなくなっていました。
ひたすら青いこの空は、あなたの住む街にも繋がっているでしょうか。
もしかしたら、あなたも今、同じ空を見上げているのでしょうか。


ふだんは胸の奥にしまいこんでいるあなたとの思い出を、時々宝物のようにそっと取り出して眺めています。
あなたの幸せをそっと願っています。
元気でいてください。


私は、この街で生きています。


***
リライトしたのはこの作品です。

正確には、リライトとは言えません。ぜんぜん違う話になっているから。

「とある手紙」であるこの作品を受け取って、彼女に代わって返事を書きたくなりました。
彼は夕陽に染まった海と空を眺めながら彼女を思い出し、彼女は澄んだ青空を見て彼を思う。すれ違っているようで、実は重なっている。対照的だけれど、リンクした作品にできればと思いました。

サヨナラを言わなかった恋には、いつエンドマークがつくのでしょうか。
彼が飛ばした紙ヒコーキは、どこまで飛んで行ったのでしょうか。
きっと、ずっと遠くまで。
いつまでも。
どこまでも。

締切は決まっていない、ゆるゆる企画だそうです。
秋は夕暮れ。ぜひチャレンジしてみてください!


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