僕の瞳に映るのは #言葉を宿したモノたち
昨夜、君はいったい何時に帰ってきたんだい?
ベッドの周りには脱いだ洋服が散らばったまま、あーあ、しわになって。
シャワーを浴びた後は髪も乾かさずそのまま眠ってしまったんだろう。
あちこち変な方向にはねて、ほら、あれみたいだ。メドゥーサ。
普段はしっかり者の君だけど、飲みすぎた翌日は少しだけだらしないよね。まあ、そんな君も好きだけどさ。
ほら、枕元でスマートフォンのアラームが鳴っている。
何度目かのスヌーズの後、君はやっと起き上がりアラームを止めた。時間を確認して、
「やばっ」
小さな叫び声を上げてバスルームに駆け込んでゆく。
「頭痛い・・・会社行きたくない・・・」
君はぶつぶつ言いながら、僕の前で恥じらいもなくパジャマを脱ぎ洋服に着替える。
「やだ!」
よこしまな視線に気づいたのか、君は僕を正面からにらみつけた。
「どうしよう、私、ちょっと太った!?」
僕の前で頬をつねったり、パチパチ叩いてみたりと百面相。
・・・朝からにらめっこかい?
僕がなかなか笑わないものだから、君は自分の顔に落書きを始めた。眉を太く書き、目を大きく見開き、唇を尖らせて赤く塗る。仕上げには頬にピンクの粉をはたいて。
そして、僕に向かってにっこりと、とびきりの笑顔。
こらこら、にらめっこのルールを知らないの?笑ったら君の負けだよ。
でも、顔に落書きした君はとってもとっても可愛くて、正直もう勝負なんかどうでもよくなってしまったんだ。
ああもういいよ僕の負けで。
・・・もちろん素顔の君だって十分素敵なんだけどね。
「あっ、電車に乗り遅れちゃう!」
そうだ、遊んでいる場合じゃなかった。君は僕に背を向け、バタバタと玄関に向かう。
あーあ、後ろの髪がまだ少しはねてるじゃないか。
まあいいか。それも可愛いから。
今日も仕事、頑張って。行ってらっしゃい!
僕は手を振る代わりに、僕の先祖代々伝わるおまじないを君にかけてあげる。
「世界でいちばん可愛いのは、君だよ」
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さて、僕は一体誰でしょう?
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みなさんのnoteを読んでいて、コメント欄やTwitterでの大喜利的盛り上がりに驚き。
記事を書くよりコメントの方に頭をひねったり悩んだりしているのは、きっと私だけじゃないはず。