捨てないで。 #言葉を宿したモノたち
私たちは狭くて寒い部屋に押し込められて、毎日じっとお客さんを待っている。
透明な扉から覗き込む好奇の目に耐えながら。
目新しい子が次々現れるこの業界は、入れ替わりも激しい。
今日はなんとか大丈夫、でも安心はできない。
明日は目立たない隅っこに追いやられるかも知れないし、ひょっとしたらもう、不要だと烙印を押されてしまうかも知れない。
そんなプレッシャーに押しつぶされそうで、私は毎日辛い気持ちを必死にこらえていた。
でも。
あなたは私を選んでくれた。
たくさんのライバルたちの中から、私を。
品定めするような視線に、思わず何度もうつむきたくなったけれど。
やがてあなたは決心したように小さくうなずくと、扉を開けて、私を外に連れ出してくれた。
私たちを管理している人に規定の料金を払うあなた。
たったこれっぽちのお金で、私はあなたに買われてしまった。
でもいいの。
私はあなたの思うまま。覚悟はできてる。
あなたは私を店の外に連れ出すなり、私の腰にまわしていた手に力をこめ、唇を近づけてきた。
いきなり?
そう思ったけれど、私は抗うことはできない。
やがて、ふう。と小さな息をつき、あなたは満足そうに微笑んだ。
強引なのね。でも、そんなあなたも素敵だと思う。
・・・大好きよ。
だから。
終わったあとも、
・・・あっさり捨てたりしないでね。
******
さて、私は誰でしょう?
ヒント。肌寒くなってきた最近は、暖かい部屋にもいることもあります。
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実はコレ、1年前に書いてアップしたものなんですが、企画に合いそうなので再投稿しました。もう一つくらい書けたらいいなと思いつつ、さて、書けるかどうか。頑張ります!投稿も、ほかの方の作品の推理も。
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