ラーメン・餃子・生ビール

顔なじみの店員に、とりあえずビールと餃子の注文を告げた後、
「またけんかしたの?」
私はいつものように、こう切り出した。
あなたは曖昧に笑っているけれど、やっぱり図星か。
「今ダイエット中なのに。夜10時以降に食べちゃだめなんだから」
「じゃあ食わなきゃいいじゃん」
「じゃあこんな時間に呼び出さないでよね」
こんな言い合いも、いつものこと。
「ま、ここは俺がおごるから」
ちょうど運ばれてきた生中のジョッキを、二人で何となくぶつけ合う。

かんぱーい、と小さく呟いたあなたに
「何がめでたいわけ?」
わざと言ってしまう私は意地悪だ。
あなたが私に電話をかけてくるときは、いつも「カノジョ」と何かあったときだということは、今までの経験上、いやというほど分かっている。

私たちの待ち合わせ場所はいつもここ。
オシャレとは対極線にあるような、特徴も何もないありふれたラーメンと餃子の店。
無理やり誉めるなら店が清潔なことと、後は値段が安いこと。
普通なら、こういうところに女の子は誘わないよね。
聞いてみたことはないけれど、「カノジョ」をここに連れてきたことはないはず。
壁に貼られているメニューの短冊に、「冷麺始めました」と書かれたものが増えている。
後で頼んじゃおうかな、ダイエットはとりあえず延期ってことで。
自分を甘やかしながら、空になったジョッキを持ち上げておかわりを頼む私。

「さすがにさー、今度はもうだめなんじゃない?」
いつものようにそんな軽口をたたいたあとで、いつもと違うあなたの顔を見て私は後悔した。
「やっぱりそう思う?」
眉を八の字に下げて笑いながら言っても、弱気になっているのが分かる。
予想外の反応に少したじろいでしまう。思ったよりことは深刻なようだ。

今なら、言える!?
「もういっそのこと、私にしておけば?」
って。
いや、ダメダメ、無理!
ああ、あとどのくらいビールをおかわりすれば、うっかり口が滑るんだろう?私。

「だ、大丈夫だって!すぐ仲直りできるって!」
・・・少なくとも生中2杯じゃ、ぜんぜん足りないのは、確かだな。

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yotsuba siv@xxxx
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