徳島ヴォルティスが受け取った金、支払った金 ~連帯貢献金 トレーニングコンペンセーション~
序文
レアル・ソシエダとの育成業務提携が発表され、ますます育成クラブとしての色を深めている徳島ヴォルティス。
ストーブリーグも佳境に入り、2023シーズンの陣営も段々と露になり始めた。
獲得した選手を見てみると延長した櫻井や森海渡、千葉、高田など、期限付き移籍の選手に頼っている傾向が強い。
昨年までを見ても藤尾や新井、宮代や垣田など前線の選手は特にレンタル選手が多い。
期限付き移籍は、完全では獲得できないような金額の選手やそもそも売り物じゃない選手をレンタル料と給料だけで獲得できるメリットがある一方、去就に主導権がないことでスカッドが不安定になるデメリットも大きい。
特に、どれだけ活躍してもチームを去る際に移籍金が残らないことは育成クラブとして致命的な欠点である。
完全で獲得した選手を育てて、市場価値を上げて、獲った額よりも高い移籍金で売るというサイクルが理想的ではあると思うのだが、クラブは完全移籍で獲得するのに見合う選手がいなかった場合、能力や年齢を考えると割高でも完全で獲れる選手を獲るのか、移籍金という多額の投資を回避して期限付きで選手を獲るのかという選択肢がある。
ここ数年の徳島ヴォルティスを見ていると、ベテランに高い額を出すならレンタルでという印象を受ける。
移籍金が残らないという育成クラブとしての致命的な部分を受け入れてまで、何故レンタルでこれだけ選手を獲得するのだろうか。
その大きな理由には、移籍金という目前のお金は手に入らなくても、投資という点ではレンタルにも大きな可能性があるからである。
それが連帯貢献金という制度である。
今記事では、徳島ヴォルティスでの実例をもとに連帯貢献金が生むメリットについて詳しく解説していきたいと思う。
さらに、連帯貢献金と混同されやすいトレーニングコンペンセーションについても実例を交えて解説していく。
連帯貢献金
連帯貢献金とは、選手が国際移籍した場合に、移籍金の5%が連帯貢献金となり、12歳~23歳までに所属したクラブに分配される制度である。
移籍金の5%のうち
12歳~15歳に所属したクラブは1年あたり0.25%
16歳~23歳に所属したクラブは1年あたり0.5%
を請求することが出来る。
レンタル期間はレンタル先に請求権がある。
徳島ヴォルティスが選手をレンタルで獲得することのメリットはまさにこの「レンタル期間はレンタル先に請求権がある」という部分である。
それでは実際に徳島ヴォルティスに発生した連帯貢献金の具体例を見ていこうと思う。
※注意事項
この先の数字は正確なものではなく、あくまでもざっくり計算なので参考程度に考えて欲しい。
ざっくりの基準としては
所属期間は日割り計算などはせず冬と夏の市場ごとに半年単位で計算。
当時のレートを正確に考慮せず1ユーロを140円で固定計算
移籍金はtransfar markt調べ
間違ってたらごめんね!
CASE1:柿谷曜一朗の場合
柿谷曜一朗はセレッソ大阪から期限付き移籍で徳島ヴォルティスに加入
在籍期間:2009年夏~2011年
在籍期間の年齢:19歳~21歳
よって2年半が連帯貢献金の対象となる。
柿谷がセレッソ大阪からFCバーゼルへ国際移籍した際に発生した移籍金
150万€=2億1000万円
その中から徳島の取り分は0.5×2年半なので1.25%
よって移籍金×0.0125
計算すると
2億1000万円×0.0125=262万5000円が徳島の取り分となる。
CASE2:ドゥンビアの場合
ドゥンビアは柏レイソルから期限付き移籍で徳島ヴォルティスに加入
在籍期間:2008年~2008年夏
在籍期間の年齢:21歳
よって半年が連帯貢献金の対象となる。
ドゥンビアの国際移籍は
柏レイソル(日本)→ヤングボーイズ(スイス):移籍金13万€=1820万円
ヤングボーイズ(スイス)→CSKAモスクワ(ロシア):移籍金1000万€=14億円
CSKAモスクワ(ロシア)→ASローマ(イタリア):移籍金:1400万€=19億6000万円
ASローマ(イタリア)→スポルティングCP(ポルトガル):移籍金300万€=4億2000万円
徳島の取り分は0.5×半年なので0.25%
よって移籍金×0.0025
1820万円×0.0025=4万5500円
14億円×0.0025=350万円
19億6000万円×0.0025=490万円
4億2000万円×0.0025=105万円
合計949万5500円が徳島の取り分となる。
CASE3:塩谷司の場合
塩谷司は中学生の3年間、大塚FCジュニアユース(現徳島ヴォルティスジュニアユース)に所属していた。
在籍期間:2001年~2003年
在籍期間の年齢:13歳~15歳
よって3年間が連帯貢献金の対象となる。
塩谷がサンフレッチェ広島からアルアイン(UAE)へ移籍した際の移籍金は150万$=1億6500万円
その中から徳島の取り分は0.25%×3年なので0.75%
よって1億6500万円×0.75%=123万7500円が徳島の取り分となる。
トレーニングコンペンセーション
連帯貢献金と混同されがちなのがトレーニングコンペンセーション(以下TC)である。
TCは、移籍金が発生しなくても育成クラブにお金が支払われる制度。
23歳以下の選手が移籍する場合に移籍先から支払われるお金で、12歳~21歳までの間に所属したチームの在籍年数に応じて支払われる。
プロクラブからプロクラブへ移籍する際、当該選手の23歳の年度における所属リーグの最終の公式試合の日までに移籍が行われる場合に限り、直前のクラブに対してのみ支払われる。
ただし、アカデミーから1度も他クラブに移籍することなく所属し続けた場合はアカデミー所属期間を加えて請求することが出来る。
期限付き移籍は期限付き移籍元のクラブに算入される。(別段の合意がある場合を除く)
日本国内の移籍ではトレーニング補償金Ⅱという独自ルールに則って金額が適応される。
また、育成年代(アマチュア)から初めてプロ入りした場合に12歳~22歳に所属したクラブに支払われるトレーニング補償金Ⅰも別途存在する。
このトレーニング補償金ⅠとⅡを二つ合わせた総称が日本版TCであると言える。
要点をざっくりまとめると
・プロクラブ間の移籍でのみ発生
・23歳以下の移籍で発生
・金額計算期間は12歳~21歳
・関係があるのは移籍元クラブと移籍先クラブの2クラブのみ
・レンタル移籍先は無関係(別段の合意がない限り)
・アカデミーから1度も移籍せず連続所属している場合アカデミー所属期間もカウント
・FIFAの定める国際ルールに則り発生するTC金額表
・日本国内の移籍に関して独自に設定されたトレーニング補償金Ⅱ
12歳~15歳:100万円
16歳~21歳
J1:800万円
J2:400万円
J3・JFL:100万円
・アマチュアからプロ入りする際に育成したクラブに支払われるトレーニング補償金Ⅰ
TCはどうしても文字で説明しても分かりづらい部分はあるので、ここからは実例を見ていこう
※以下簡略化するためトレーニング補償金ⅡをTCと表記し、トレーニング補償金Ⅰに関しては本記事では考えないものとする。
CASE4:広瀬陸斗の場合
経歴
2008~2010:浦和レッズJr.ユース(13歳~15歳)
2011~2013:浦和レッズユース(16歳~18歳)
2014:水戸ホーリーホック(19歳)
2015~2018:徳島ヴォルティス(20歳~23歳)
2019:横浜F・マリノス(24歳)
以下略
①13歳~18歳の浦和レッズアカデミー所属期間はTC対象となる。
ただし浦和レッズのトップチームに昇格せず水戸ホーリーホックに高卒ルーキーとして加入したので「アマチュア→プロ」となり水戸にTC(トレーニング補償金Ⅱ)の支払いは発生しない(トレーニング補償金Ⅰは発生)。
②19歳の水戸所属期間はTC対象となる。
水戸から徳島へは「プロ→プロ」なので徳島はTC支払いが発生する。
直前クラブのみに支払いが発生するので浦和アカデミーへの支払いはない。
徳島は当時J2なので400万円×1年
徳島は水戸へ400万円のTCを支払った。
③徳島所属4年間のうち、20歳~21歳の2年間がTC対象となる。
TC支払い発生期限は23歳のシーズン最終試合の日までなので、23歳のシーズン終了直後に獲得した横浜FMは徳島へTCの支払いは発生しない。
CASE5:岸本武流の場合
経歴
2013~2015:セレッソ大阪U-18(16歳~18歳)
2016~2017:セレッソ大阪(19歳~20歳)
2018:水戸ホーリーホック(期限付き移籍)(21歳)
2019~2019夏:徳島ヴォルティス(期限付き移籍)(22歳)
2019夏~2021:徳島ヴォルティス(22歳~24歳)
以下略
①まず16歳~20歳までのC大阪在籍期間はTC対象となる。
②21歳の水戸ホーリーホックに期限付き移籍した期間はレンタル移籍元にカウントされるためC大阪のTCにカウントされる。
(期限付き移籍の契約に所属期間のTC額をレンタル先の水戸に払うといった条件がある場合は水戸が受け取ることが可能。)
④22歳夏に当時J2の徳島へ完全移籍で、徳島はC大阪にTC支払いが発生する。
期限付き移籍期間はC大阪にカウントされていたため、16歳~21歳までの6年分となり、400万円×6年で
徳島はセレッソ大阪に2400万円のTCを支払った。
CASE6:藤田譲瑠チマの場合
経歴
2014~2016:東京ヴェルディ1969ジュニアユース(13歳~15歳)
2017~2019:東京ヴェルディ1969ユース(16歳~18歳)
2020:東京ヴェルディ(19歳)
2021:徳島ヴォルティス(20歳)
2022~:横浜F・マリノス(21歳~)
①アカデミー→トップチーム昇格で東京V時代はTC対象となる。
②20歳で徳島に移籍したため13歳~19歳分のTC支払いが発生する。
13歳~15歳は100万円×3年=300万円
16歳~19歳は移籍先がJ1のため1年あたり800万円となり
16歳~19歳は800万円×4年=3200万円
よって徳島は東京ヴェルディに3500万円のTCを支払った。
③21歳で横浜FMに移籍したため1年分のTC支払いが発生。
800万円×1年で
横浜F・マリノスは徳島に800万円のTCを支払った。
直近クラブのみ支払いが発生するので横浜FMから東京Vへの支払いは発生しない。
数字だけみれば徳島が大損しているように見えるが、徳島から横浜FMへの移籍がシーズン終了後すぐに発表されたことを考えると、最低限この差額を移籍金として提示した徳島の条件をマリノスはあっさりのんだのではないだろうか。
CASE7:カカの場合
経歴
2014年~2018年:クルゼイロ下部組織(15歳~19歳)
2019年~2020年:クルゼイロEC(20歳~21歳)
2021年~:徳島ヴォルティス(22歳~)
①クルゼイロのアカデミーからトップチームに昇格したため15歳~21歳までがTC対象となる。
②22歳の時に徳島へ移籍したため、徳島はTC支払いが発生
15歳は100万円×1年で100万円
徳島は当時J1だったため1年あたり800万円かかり
16歳~21歳は800万円×6年で4800万円
よって徳島はクルゼイロに4900万円のTCを払った。
ブラジルクラブがカカへオファーを出すも金銭的に獲得が困難だというニュースはオフごとに流れているが、trensfarmarktによると徳島がカカ獲得に支払った移籍金は164万€(約2億3000万円)で、そこにTCが上乗せされれば約2億8000万円となる。
4年契約のうち2年消化したので減価償却しても最低7000万円は移籍金を積まれない限り徳島は移籍を認めないだろう。
CASE8:髙田颯也の場合
2023年冬に加入した髙田颯也はレンタルでの加入なので当然TCは発生していない。
期限付き加入となったが、どうして完全移籍ではなくレンタルになったのかと考えると、徳島と大宮の間にTCをめぐる駆け引きがあったのではないかと推測した。
ここでは存在したかもしれない、もしくはこれから起こるかもしれない3つのパターンを見ていきたいと思う。
パターン1:2023冬に完全移籍で獲得していた場合
結果的に2023冬は期限付き移籍となったが、徳島側のメリットとしては実力が未知の選手に移籍金とTCを支払うリスクをなくせることが大きい。
ではもし完全移籍で獲得していればいくらかかったのか。
移籍金は分かりようがないのでTCを計算していくと
・高田は16歳~21歳大宮下部組織所属なので21歳までの6年間がTC対象
・徳島はJ2
により
400×6年=2400万円を徳島は大宮に支払うことになっていた。
大宮としては十分な大金が入るが、それ以上にメリットのあるパターンが2つ存在する。
パターン2:2024冬に完全移籍するorしない(徳島がJ2)
2023シーズン徳島が昇格を逃した場合、2024年もJ2でTC対象期間も変わらないため、2023冬に獲得するのとTC額は変わらない。
契約年数を1年消費することで移籍金は減ってしまう可能性が高いものの、大宮としてはA契約枠外かつHG選手を積極的に放出したいと考えている可能性は低い。
大宮が2023シーズンに昇格もしくは2024年にそれを狙える可能性を示すことが出来れば高田を徳島に売る理由はなくなる。
しかも育成に定評のある徳島で1年間プレーし、経験値を積んで帰ってきてくれれば大成功だと言える。
それ以外にも、仮に徳島で活躍すればJ1のクラブからオファーが来る可能性もあり、2023年に徳島に売るより高額な移籍金で売却できる可能性もある。
パターン3:2024冬に完全移籍(徳島がJ1)
徳島が2023年にJ1昇格を決め、2024冬の市場で完全移籍するパターン。
このパターンではTC額が大きく変化する。
移籍先の所属リーグがJ2→J1に変わることで、TC1年あたりの係数は400万円→800万円に増加する。
よって1年後に徳島が昇格した後に高田を買い取ると
800万円×6年=4800万円を徳島が大宮に支払うことになる。
大宮は1年待つだけで受け取れる金額が倍に増えるのだ。
もちろんこの額を払う価値をこの1年間で示せなければレンタルバックになるので高田の活躍を祈らなければいけないのだが、夢のある金額だろう。
徳島側のメリットとしては、1年間徳島でプレーしてもらうことで仮に他クラブからオファーがあっても優先的に交渉できる点だ。
一緒に昇格したクラブで一緒にJ1を戦えることは高田側にもメリットは大きい。
レンタル移籍に優先交渉権や買取オプションを不随している可能性もある。
このように2023冬の高田のレンタル移籍は、徳島側、大宮側のメリットデメリットが複雑に絡み合った結果このような結末に落ち着いたのではないかと推測できる。
※あくまでも個人の妄想です
―――追記―――
上記は2023年開幕前の段階で書いたものだが、そこから1年が過ぎた2024年のオフに新たな動きがあったため追記していきたい。
パターン4:2024年冬はレンタル延長
昨オフの段階で3つのパターンを想定して書いたが、結果的には大宮がJ3降格、徳島はJ2残留、髙田颯也は徳島で出場9試合128分と、3者とも不本意な成績に終わった。
そして2024年の髙田颯也の去就は徳島にレンタル延長という、上記した3パターンのどれにも該当しない結果となった。
なぜこのパターンを想定していなかったのかというと、保有権を持つ大宮に著しくメリットが少ないためである。
徳島側が結果を残せなかった髙田にTC2400万円を支払って買い取るとは考えにくい。
そのうえTCの支払いは23歳のシーズン終了までが期限となっているため、大宮が髙田の移籍でTCを受け取れるのは2024年夏の市場までとなる。
そのため大宮としてはレンタルバックが既定路線なはず、だった。
しかし実際には2025年1月31日までのレンタル移籍延長となった。
この時点で大宮は髙田の移籍でTCを受け取れる可能性が消滅。
そしてわざわざ新契約を締結していない限り契約年数を消化することになるため移籍金も減少する(フリーになる可能性もある)。
大宮は2024年に髙田がどれだけ活躍してもメリットが少ないし、逆に徳島にとってはローリスクハイリターンの状態となった。
買取オプションが付いていたり、J3降格となった大宮が髙田のキャリアを想ってJ2の徳島へ送り出した可能性はあるが、それにしても大宮側のメリットが見えにくい移籍となった。
―――さらに追記―――
パターン5:2024年夏に徳島へ完全移籍
結果的に髙田颯也は2024年夏に徳島へ完全移籍という最も想定外の結末を迎えた。
規定通りなら2024年夏の市場までに移籍したことにより髙田颯也にはTC2400万円が発生することになる。
しかし上記したように、髙田のレンタル期間は2025年1月まであった。
レンタル契約を完遂すればもっと安く獲得できた可能性が高いのにどうして2024年夏の段階で完全移籍で獲得という判断になったのだろうか。
いくつかの可能性を考察してみよう。
特段の契約がないのならば髙田へ対して徳島に優先交渉権がある訳ではなく、他のクラブも同じように交渉できる。
髙田は完全移籍が発表された段階で26試合中25試合に出場、そのうち途中出場が21試合。
スーパーな活躍をした試合もありジョーカーとして徳島の中で地位を築いたと言える状態にある。
この状況を鑑みて、冬に他クラブからオファーが来る前にお金を払ってでも獲得しておこうという判断をした可能性は大いに考えられる。
また、レンタル契約にこういった買取ができるオプションが付随していた可能性もある。
他には、仮に髙田が2025年冬に大宮との契約が切れフリーとなる場合、現状では髙田が大宮に戻らないのならば大宮側には何も残らない。
その前に大宮側から徳島に買い取りを持ち掛けたのなら本来の移籍金+TCよりも低い金額で移籍が成立している可能性もあるだろう。
1週間ほど前に大宮がレッドブルグループに買収されたと発表があったが、その影響で人員整理と金策ということもなくはないだろう。
レンタル契約に買取義務が付随していた可能性も考えられる。
規定試合数の出場で買い取り義務が発生するというのもヨーロッパではよく見る契約形態だ。
そもそも2024年冬のレンタル延長が不可思議だったことを考えると可能性はあるのではないだろうか。
様々な可能性が考えられるが、最も考えられる可能性としては実質トレードである。
1か月ほど前、徳島から八戸にレンタルしていたオリオラサンデーが大宮へ完全移籍すると発表された。
J3での活躍を見ていても徳島側としては売ってしまうのがもったいないのではと感じる移籍だ。
こちらは移籍金+TC250万円が発生しており、徳島が安い移籍金で売るとは考えられないのでそれなりの金額が動いていることは間違いないだろう。
このオリオラサンデーと髙田颯也が実質トレードという形で人の交換のみで移籍金はほとんど(もしくは全く)動いていないのではないかという説である。
であるならば夏のタイミングでレンタルを打ち切って完全移籍に移行したのも腑に落ちる。
こういった特殊なパターンになった以上確かなことは何も分からないが、クラブ間で表に出てこない様々な交渉があったことは確かだろう。
本記事を最初に投稿した2022年末から約1年半、髙田颯也の動向を追ってきた結果面白い移籍劇が見られたのではないだろうか。
結文
ここまで実例とともにお金の動きを見てきたが、連帯貢献金とTCどちらも共通して言えることは、アカデミー出身選手が出世するとクラブに莫大なお金が落ちてくるという事だ。
TCの例でジョエルやカカなどアカデミー出身選手の金額が大きくなることは分かっていただけただろう。
連帯貢献金でも、例えば冨安がボローニャからアーセナルへ移籍した時、アビスパ福岡は1億5000万円を手にしたと言われている。
徳島はTCを躊躇せずに払う印象があり、上記で紹介した以外にも
渡大生1200万円
石尾崚雅1200万円
中野桂太2300万円
などが発生している(※契約内容によっては必ずしも支払ってはいない)。
これまでTCを払って獲得した選手を見ると、現所属以外は全員J1へステップアップしており、それだけの額を支払っても移籍金で取り返せるくらい市場価値を上げることが出来るという自信を持って獲得しているのだろう。
徳島ヴォルティスはここ数年、J2中位下位クラブの主力を引き抜くことで強化してきたが、J2からJ1へのステップアップ速度が上がり選手獲得が難しくなっている。
そこで次の手として、他クラブでユースからトップチームに昇格したものの試合に出られずくすぶっている選手を、TCを支払い獲得するという動きは多くなってくるのではないだろうか。
この方法は大金が必要になりリスクも大きいので、他のクラブはなかなか手を出しづらい手法だろう。
しかし、育成への自信と選手売却での資金力を持つ徳島はそれが可能になっている。
他のクラブが簡単に真似できない徳島ならではの手法であると言える。
冒頭で期限付き移籍のメリットデメリットの話をしたが、柿谷の例などを見てもレンタルで1,2年そこそこ所属しただけでは大した金額にならないからメリットは少ないのではないかと感じる人もいるだろう。
ただ、評価の低い選手に割高な移籍金を払えば、その金額はピッチ上での活躍に終始してしまう。
一方期限付き移籍なら、レンタル費用のみで将来有望な獲得でき費用を抑えられるうえ、その選手が出世すれば連帯貢献金として一部キャッシュバックが起こる可能性がある。
このような事を考えて完全移籍にこだわるよりもレンタルを上手く活用する方がメリットが大きいと徳島のフロントは考えているのかもしれない。
もちろんアカデミーや新卒選手を育てる、有望な選手を完全で獲得するというのが最も良いのは明白である。
しかしクラブの経営規模やリーグでの立ち位置を考えると、それだけでやっていけるクラブはそう多くはない。
レンタルに頼り過ぎると毎年チームが解体され安定したチームづくりが難しくなるデメリットも存在するが、それらを理解したうえで上手くバランスを取れればレンタルというのも有効な選択肢になり得るのではないだろうか。
出典:JFA「プロサッカー選手の契約、登録及び移籍に関する規則」
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