2022→2023ストーブリーグまとめ
まえがき
2023/1/9の新体制発表当日に発表されたオリオラサンデーの契約延長発表で徳島ヴォルティスの2022-2023ストーブリーグは終了したのではないかと思われる。
この記事では昨年との比較で選手スタッフがどう変化したのか、ポジティブな点やネガティブな点を主観的に感想を述べたいと思う。
昨年との比較
まずはIN OUTの表を見ていきたい
監督をはじめスタッフが多く入れ替わった一方、主力選手の流出は少なく、スタメン9人が引き抜かれた昨年とは大きく異なるオフシーズンとなった。
スタッフ
簡単に互換してみると
監督:ポヤトス→ラバイン
コーチ:マルセル→古川毅
フィジカルコーチ:カルロス→アイトール
アシスタントコーチ:小林淳士→シシーニョ
スペイン語通訳:志水和司→小澤哲也
スペイン語通訳:岡井孝憲→布目浩樹
ポルトガル語通訳:ササオカユキオ→畠本フェレイラ真之
これに加えトレーナーに愛媛から斎藤健太、アナリストに横浜国立大学でスタッフを務めた青山学院大学からの大卒中島瑛を迎え昨年より2人多い陣営となった。
昨年までアシスタントコーチが担当していたと思われるアナリスト業に専門職を作り大卒の若い人材を迎えた。
トレーナーの増員で怪我やコンディション向上にも期待したい。
選手
こちらも簡単に互換していくと
藤尾翔太→森海渡
一美和成→千葉寛汰
バケンガ→柿谷曜一朗
佐藤晃大→渡大生
藤原志龍→高田颯也
新井直人→ルイズミ ケサダ
川上エドオジョン智慧→吹ヶ徳喜
藤田征也→外山凌
これに加え中野桂太や後東尚輝の復帰、ルーキー3人も加入し、昨年より人数は5人増加で37人となった。
分布図を見ていこう
玄理吾が昨年A契約締結条件を満たしたためA契約に移行となった。
平均年齢は昨年より0.2歳下がり26.0歳
世代別人数増減
北京世代:4人→2人=-2人
ロンドン世代:4人→4人=±0人
リオ世代:8人→10人=+2人
東京世代:11人→12人=+1人
パリ世代:5人→9人=+4人
全体の人数が5人増えたなかで増加したのはリオ世代以下で、特にパリ世代は4人増加と人数を伸ばした。
ホームグロウン選手は昨年の4人から一人減らし3人
J2では2人が必要数だがJ1では4人必要なので、昇格を考えると宿題を残した格好となった。
レンタル組は藤尾と新井が満了、櫻井は延長
柏から森海渡、大宮から高田、清水から千葉が加入
昨年より1人多い4人となった。
特に前線の選手はここ数年続いているが将来有望な若手のレンタルに頼りがちな傾向が継続されている。
ポジションに当てはめて見てみよう
CFとSBに動きが多いことが見て取れる
右SBにOUTが多かった一方加入は左SBが多く、多少ここはバランスが崩れた
レンタル組
レンタル組の動向を見てみよう
海外組の3人は除き、
2022年のレンタル組は8人
2023年のレンタル組は3人
レンタルバックとなったのは吹ヶ徳喜と後東尚輝
夏に福島へ行きコンスタントに出場を重ねた大森博はそのまま福島へレンタル継続
2年間JFLの奈良クラブでプレーし、昨年はチームの心臓としてJFL優勝&J3昇格に貢献した森田凜は恩師倉貫一毅が監督を務めるFC琉球へレンタル3年目
藤原志龍も森田と同じくFC琉球へレンタル
ポルティモネンセ以来2度目のレンタルとなる。
そのまま放出となったのは
まずは浦和に完全移籍となった岩尾憲
愛媛で主力だった鈴木大誠は地元奈良へ完全移籍
宮崎でJ初ゴールを挙げるなど守備の要として活躍した奥田雄大はカマタマーレ讃岐へ完全移籍
長期的な怪我で苦しんだ武田太一はFC大阪で復帰しても国体出場にとどまったがそのままFC大阪へ完全移籍となった。
他のクラブと比べても生え抜き選手を長い目で見る徳島だが、この冬は群馬へ移籍した川上エドを含め主力になり切れなかった選手たちを整理するオフとなった。
昨オフには久米航太郎が契約解除となったが、今オフは誰も契約満了を出すことなく移籍先がスムーズに見つかり、徳島で活躍できなくても他のクラブで活躍できる選手に育ってくれたのはそれはそれで嬉しいと思える。
2022年まではレンタル先としてJFLのクラブも多かったが2023年のレンタル組は全員J3というのも嬉しい。
特に森田凜はJFLでしっかり結果をのこして、仮に移籍しなかったとしても自力でJFLからJ3へ上がったのは素晴らしい。
感想戦
ここからは主観的に今ストーブリーグの感想を述べていきたいと思う
昨オフとの差
思い出したくもない昨シーズンのストーブリーグ
J1から降格し主力9人が流出、特に中盤は総替えとかつてない地獄の冬となった。
それに引き換え今冬はレンタルバックの藤尾と新井を除けば流出した主力は一美のみで、個人昇格が危惧されていた選手は軒並み残留。
主力の残留が最大の功績といえるオフとなったのではないだろうか。
ここまで放出より加入の印象が大きく上回ったのはJ1に昇格した2021年を除くと2019年以来の印象
ポジティブな点
昨シーズンの最も大きな課題は得点力だった。
ボールを保持し自分たちがイニシアチブを取り試合を進めることで失点数を減らすことには成功したが、押し込んだ相手を崩しきるには足りない部分がある。
戦術を遂行できる選手を揃えることは悪いことではないが、得点を取るには戦術を超えてゴール前で違いを生み出せる個の力が必要であることを痛感するシーズンとなった。
今オフはその点にフォーカスしえる選手の補強に成功したと言える。
まず一人目は渡大生。
2017年に徳島で23得点を記録し、現在も1シーズンでの得点記録は破られていない。
徳島サポならご存じだろうが渡は非常に得点パターンの多い選手である。
シュート技術の高さはもちろんのことヘディング、ミドルシュートでも点が取れ、アシストもできる。
プレッシングもこなせ泥臭く戦える魅力も持つ。
2017年は山﨑凌吾という相手を背負える相方がいたので、1トップでどこまで輝けるかは未知な部分ではあるもののこの上ない補強であることは言うまでもない。
もう1人は柿谷曜一朗である。
日本屈指のテクニックと質の高さを持つジーニアスの徳島帰還は今オフ最大のニュースだった。
CFで出場するなら、徳島のCFはまずプレッシングが求められる。
しかし柿谷も30歳代になり、90分フルでプレッシングを続けるようなプレーを求めるのは難しいというかそもそもそういうタイプの選手ではない。
しかし、戦術など関係なく年間何点か理不尽に得点を生み出してくれる選手というのはカードとして非常に重要である。
近年の徳島はこのカードが埋まらずにいた。
最後にこの枠と言えたのは野村直輝だろう。
個人の力で違いを生み出してくれるという点では贅沢すぎる選手である。
さらに柿谷には別の役割もある。
まずは広告塔としての役割
ワールドカップに出場経験のある元日本代表選手というだけで普段見に来なかった人がスタジアムに足を運んでくれる可能性は大きく上がる。
しかもそれがあの柿谷であると、徳島県内での知名度も圧倒的に高い。
柿谷が帰ってきたからという理由で試合を観た人が、柿谷だけじゃなく徳島ヴォルティスというチームや他の選手に興味を持ってもらえれば固定客を一気に増やせるチャンスである。
今シーズン見ている人が面白いと思えるサッカーで勝利を上げることは非常に重要となる。
早速新体制発表でのコメントがネット記事になっていたが、全国的なのニュース記事にも取り上げられやすくなりクラブ側が努力する以上の露出が増えることも期待できる。
次に若手育成の役割
若手育成にはベテランの役割は非常に大きい
これまでも戦術理解とリーダーシップに長けた岩尾や、J1での経験値を持った佐藤や石井など、若手に良い影響を与えてくれたベテランは多くいた。
しかしそれらの選手たちでも埋められなかったものがある。
それが世界レベルの経験値である。
日本代表での経験、海外クラブでの経験、W杯での経験
これらを持った選手は徳島ヴォルティスには居なかった。
数年前塩谷が日本に帰って来る噂が出たとき徳島に来てくれないかと願っていたが、徳島ヴォルティスにとって柿谷というこの上ない選手が来てくれたことはあまりにも大きい。
新体制発表会では「倉貫さんの背中をみてプロになれた。自分がその年齢になって若い子たちに背中をみせたいなと思って帰ってきました。」
と答えており、若手に良い影響を与えてくれるだろう。
また、柿谷を見て徳島ヴォルティスを志す子供たちが増えれば嬉しい。
とはいえ背負わせすぎてプレーに影響が出るのは本末転倒なのでほどほどに頑張って欲しい。
ネガティブな点
不安要素を挙げると、まずは監督。
もちろん期待はしているし、スペイン路線の継続性から積み重ねや監督をサポートできる体制も整っているが、やはりトップチームでの監督経験がないというのは不安要素になる。
プロ選手と育成年代の選手ではコミュニケーションの取り方も違う。
理論だけでは上手くいかず、選手の感情にも向き合わなければならない。
初めての日本で文化の違いなどもあるだろう。
そこをラバイン自身はもちろんだが、甲本さんやシシーニョたちとどう乗り越えていけるかは今季の結果に大きく関わって来るのではないだろうか。
もう一つ上げるなら多少の編成の偏り
先述した左SBが多く右SBが少ないのもあるが、個人的には白井をインテリオールで使えるくらい安心できるアンカーが確保出来なかったことも惜しかったと感じる。
長谷川雄志や櫻井、ルーキーの山下が活躍してくれることは期待しているが、現時点で編成として昨年よりレベルアップすることは出来なかった。
以上2点挙げたものの、正直ネガティブな点はそう多くなく、収支としては圧倒的にポジティブな要素の多いオフシーズンとなったのではないだろうか。
トピックス
人事以外にあったオフシーズンのトピックスも取り上げたい
まずはレアル・ソシエダとの提携発表
育成クラブとしてアカデミーの強化は至上命題だが、欧州でも屈指の育成メソッドを持ったラ・レアルとの提携は非常に大きな発表だった。
通常なら提携を断っているソシエダとの提携を勝ち取れたのもスペイン路線を継続してきたことの功績だろう。
まだ公式発表はされていないがハノーファーとの提携も行われる見通しとなっており、今オフがシンギュラリティとなり徳島のアカデミーは変わっていくかもしれない。
次は偉大な2選手の引退である。
徳島でプロになり長年徳島の歴史を共にしてきた佐藤晃大
トライアウトで加入し2019にはJ2アシストランク2位になった藤田征也
佐藤は引退後徳島の営業部に、藤田は札幌のアカデミーで働くことになった。
佐藤については書ききれないほど書きたいことがあるので後日別記事にて書きたいと思う。
2人とも徳島のために戦ってくれてありがとう。
次のトピックスは、リリース映像の質の高さである。
ラバイン監督の発表
柿谷曜一朗の発表
どちらも徳島サポーターの枠を超えて話題となり、徳島ヴォルティス公式twitterのフォロワー数を大きく超える再生数となった。
こういった映像作品は間違いなくクラブのブランドイメージを高め、サポーター獲得などに良い影響を及ぼすだろう。
特に柿谷獲得発表映像は、日本トップレベルの知名度を誇る選手の獲得にも関わらず事前に情報を一切漏らさず映像撮影から発表までをやりきり、その映像で同時に新ユニフォームを発表まで行ったことで大きな反響を呼んだ。
昨年上がっていたキャンプレポート動画も楽しみにしておこう。
あとがき
スタッフ人事で気になったことがあって、
ラバイン監督やアイトールフィジコ、シシーニョなどスペイン人で固めつつ通訳も指導者経験持ちの人が多い。
そんな中OBの古川さんを連れてきたのは近年の動きでは意外だった。
なんとなくだが、流動的なスペイン勢のように知識をもたらす人と、長くクラブにいる甲本さんみたいに経験を溜め込む人を分けて考えているのではないかと感じた。
例えるとスペイン勢が衆議院で甲本さんたちが参議院のようなイメージ。
ただ外から連れてくるだけじゃなくよく考えられているなと思った。
あとは、ホームグロウン選手問題
現時点で3人だがJ1へ上がると4人必要になる。
レンタルで出ている選手にも志龍や森田、2024シーズンには大森やワディもHG選手となる。
HG選手が主力として活躍してくれないと編成はどんどんひっ迫していくためアカデミー選手や高卒選手には頑張ってもらわないといけない。
そのためにもアカデミー強化に動いているわけだが、ちなみに来年はユース史上最強だった森田凜世代が大学4年生になるのだ。
具体的には大阪学院大学の澤崎凌太くんや立命館大学の市川健志郎くんなどは大学サッカーリーグでレギュラーとして活躍している。
これらの選手を徳島が獲得するかは不明だが大学組が成長して帰ってきてくれるとクラブとしてはかなり助かる。
あとは法政大の中川真くんも今年4年生。
澤崎くんは徳島が取らなくてもプロにはなれる気がするが。
正直、今オフは話題が多すぎてもうお腹いっぱいです。
さっさと試合してほしい。
試合とは言わないまでも児玉と柿谷がただリフティングするだけのイベントを入場料1500円で開催して欲しい。
柿谷の加入で注目が集まるなか、2024シーズンからJ1が20クラブ制となり分配金の比率が上位クラブに偏ることが発表され、クラブとしても今年はなんとしてでも昇格したいという危機感のようなものを感じる。
実際今年昇格して来年残留することが出来なければACLという目標には取り残されることになるだろう。
そのためにストーブリーグでやれることは全てやった印象は受ける。
あとは2月の開幕を楽しみに待ちたい。
柿谷効果でどこまで集客が伸びるか楽しみである。
その集まった客をサポーターに変えるようなサッカーを期待したい。
個人的に今年最も期待している選手は…
棚橋尭士!!!
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