2024シーズンレポート
今期起こった主な出来事
詳しい内容はこちらの記事で書いたため省略させていただく。
クラブ戦績
2024シーズンの徳島ヴォルティスの戦績を見ていこう
16勝7分15敗
勝ち点55
得失点-2
42得点はリーグ12位
44失点はリーグ13番目に多い
J2順位8位
Jリーグ順位28位
監督交代後の戦績の変化を見てみると
平均勝点は+1.07
平均得失点は+1.16
勝率は+34.1%
敗率は-39.2%
平均得点は+0.3得点
平均失点は-0.86失点
というように軒並み数字は改善されており、前監督解任退任時点で最下位だったところから8位まで順位を上げたことを考えても、監督交代は正解だったと結論づけることができるだろう。
順位に関して言うとJ2の8位というのは2022年と同じ順位だが、今期からJ1が2チーム増え、J2が2チーム減ったことを考えると昨年まででいう10位と同じであるため、過去と比較する場合は考慮する必要があり一概に一桁順位と褒められるかは微妙。
次のデータを見ていこう
こちらも監督交代で軒並み数字は改善されている。
PK獲得数7はリーグ最多で、与PK0というのも当然リーグ最少(0は徳島のみ)
1年間で一度もPKを与えなかったのは20年間で初めてである。
一方で警告数58はリーグ最多。
反則ポイント103もリーグ最多。
警告退場なし試合数もリーグ最下位の5試合。
警告も反則ポイントもリーグ最多は20年間で初めて。
実際今期は守勢に回るとボールを奪えず一方的な展開になる時間が多かった印象がある。
選手に強度は求めるが、組織して整備されておらず5-4-1の人海でブロックを組んでいた。
結果的に守備が後手になり警告数や反則ポイントといった数字に表れたのではないかと考えられる。
次にスタメン固定値を見てみよう
スタメン固定値とは筆者が勝手に作った指標なのだが、全選手のスタメン出場した試合数を人数で割った値である。
これが何を表しているかというと、数値が大きいほどシーズンを通してスタメンが固定されている、逆に数値が小さいほどスタメンを固定できていないということになる。
2024年のスタメン固定値12.7というのは過去20年間で2014年に次ぐ2番目に小さい数字。
J2では過去最も小さい。
要するに年間を通してそれくらいスタメンを固定できなかったということだ。
実感として夏の市場では過去にないほど選手が入れ替わり、ガチャを引くようにスタメンを入れ替えていた。
次に入場者数
平均入場者数6054.3人は過去20年間で2014年に次ぐ2位
J2で平均入場者数6000人超えは初
近年のJ2リーグ平均入場者数と徳島の平均入場者数の差がこちら
2024シーズンの徳島ヴォルティス平均入場者数とJ2リーグ平均入場者数の差は-1613人
平均入場者数がJ2最多となった一方、他クラブの増加量と比較すると入場者数は伸びていないことが分かる。
入場者数の数字は伸びているとはいえ、他クラブとの競争力という点で言うと一概に喜べない部分もある。
次にホームアウェイ別分けた星取表がこちら
ホームが7勝3分9敗で勝率36.8%、1試合あたりの平均勝点は1.26
アウェイが9勝4分6敗で勝率47.4%、平均勝点は1.63
次に1戦目、2戦目で分けた星取表がこちら
1戦目が6勝4分9敗で勝率31.6%、平均勝点は1.16
2戦目が10勝2分6敗で勝率55.6%、平均勝点は1.78
2戦目はボトムハーフ10チーム相手に9勝1分0敗
一方でトップハーフ9チーム相手には1勝2分6敗
ブロック別の戦績がこちら
下位相手には確実に勝利している一方、上位相手にはほとんど歯が立っていない。
試合内容を見ても千葉いわき秋田など強度の高い相手には何もできず負けた印象である。
各シーズンのトップハーフ相手の平均勝点を高い順に並べたのがこちら
2024年は0.78ポイントで14位
J1だった2シーズンを除けば、3年連続最下位期と2012年に次ぐ低さとなっている。
逆を言えばボトムハーフへの勝率は高い。
目標が残留争いであれば下位に勝ち切れることの価値は大きいため、目的にあったチーム作りであると言える。
しかし昇格争いとなれば上位に勝っていく必要がある。
自動昇格、優勝を目指すなら尚更。
徳島ヴォルティスの来季目標はあくまでJ2優勝のはずだが、目標に合った方向にチームが向いているかというと疑問を抱かざるを得ない。
サポーターズカンファレンスの中で岸田社長は
と話していたが、今期のやり方でその強度の高い相手に勝てたかと言えば勝ててない。
善戦すらできていない。
むしろ目的に対して真逆の結果が発生している。
この部分を蔑ろにして監督続投を早々に決定したことは理解に苦しむ。
次にJスタッツによる細かいデータを見てみよう
リーグの中で良い順位なのは
攻撃に関する数字ではパス数や支配率、ドリブル数
守備に関する数字ではタックル数やインターセプト数
あとは1vs1勝利数
一方で悪い順位なのは
守備に関する数字ではブロック数や空中戦勝利数、こぼれ球奪取数、ファウル数
攻撃に関する数字ではチャンスクリエイト数や枠内シュート数、クロス数
この中で注目したいのはクロス数
今期のクロス数は497本でリーグ19位
今期開幕前、吉田前監督は「徳島はクロスの数が少ないからクロス数を増やす」という話を何度もしていた。
7試合で監督が交代したとはいえ、キャンプから重点的にトレーニングしてきた部分に数字として何の成果も表れていないというのはシーズン通して狙った積み上げがされていないということではないだろうか。
そもそもクロス数を上げれば得点が増える、勝ちにつながるという考え自体に疑問が残る。
2024シーズンのクロス数最下位は3位長崎だし、優勝した清水も12位。
とはいえクロス数1位は2位横浜FCなので上位チームが必ずしもクロス数が少ないというわけでもない。
要するにクロス自体は別に重要なものではないのだが、それに貴重なキャンプを溶かしたことに問題がある。
シーズン通した積み上げもされてなければ積み上げるべき内容も間違っていると感じる。
筆者は別に増田さんのことを悪い監督だとは思っていない。
特に、冷蔵庫にある限られた食材からある程度ちゃんとした料理を作る能力は比較的長けている監督だと思っている。
ただ増田さんのそういう力を発揮できるのは、残留が目標のチーム、もしくはリーグ内で資金的にアドバンテージのある神戸や町田のようなクラブだと思っている。
徳島はそのどちらでもなく、中規模の資金力で、個人の能力とは別の部分で資産差をひっくり返して昇格優勝を目指すという立ち位置だ。
その役割をこなせる監督かというと違うのではないかというのが筆者の結論である。
選手記録
今期所属した選手は計38名
まずは出場記録
最多出場は森昂大の38試合
最長出場も森昂大で3391分
最多スタメン出場は森昂大の37試合
最多フル出場も森昂大の37試合
最多途中出場は髙田颯也の28試合
次に得点アシスト
最多得点は渡大生の9得点
最多アシストはブラウンノア賢信の4アシスト
次に警告数
最も警告が多かったのは児玉駿斗の7枚
退場は青木駿人の1枚のみ
CBとしてほぼフルタイム出場して警告1枚の森昂大は目を見張る数字である。
その他、森昂大に関するJスタッツの数字をピックアップすると
プレー数2638回がチームトップ(リーグ4位)
パス数2346回がチームトップ(リーグ4位)
自陣パス数2099回がチームトップ(リーグ2位)
ロングパス数269回がチームトップ
タックル数63回がチームトップ
空中戦勝利数109回がチームトップ(2018年以降のチーム歴代トップ)
デュエル勝利数64回がチームトップ
児玉駿斗に関するJスタッツの数字もピックアップしてみると
敵陣パス数746回がチームトップ
インターセプト数9回がチームトップ
被ファール数45回がチームトップ
チャンスクリエイト数39回がチームトップ
こぼれ球奪取数111回がチームトップ
Jスタッツのデータで森昂大が7冠、児玉駿斗が5冠となっており、この2人が2024シーズンの中心だったことがデータにも表れている。
その他では
シュート数最多はブラウンノア賢信の68本
枠内シュート最多は渡大生の20本
ヘディング得点数最多は渡大生の3ゴール(リーグ8位)
ドリブル数最多は髙田颯也の110回(リーグ2位)
スルーパス最多が杉本太郎の39回
ファール数最多はブラウンノア賢信の68回(リーグ1位)
次にGKデータ
Jスタッツがこちら
90分あたりの被枠内シュート数がスアレスと田中で約半数になっていることからも、2人が出ていた時期でチーム状況に差があることがよく分かる。
平均被シュート数もスアレスの方が1.2本多い。
そのなかでもスアレスのセーブ数、セーブ率が高いのはさすがと言える。
ペナルティエリア内からのシュートは軒並みスアレスの方が数字が良く、ペナルティエリア外からのシュートやクロスは軒並み田中の方が数字が良いのは面白いポイント。
結文
徳島新聞に掲載された黒部強化本部長のインタビューで、来期の編成方針を問われた強化本部長は現在のサッカー界のトレンドに触れたうえで「パワーがある選手」と答えている。
これまで徳島ヴォルティスはスタイルを確立しようとしていたと筆者は認識していた。
しかし結局は強化部や監督が変わるたびにやっていることが変わり、トレンドに流されそれを後追いするだけのどこにでもある普通の田舎のサッカーチームに成り下がってしまっている。
いや、筆者の目が節穴だっただけで、元々そうだっただけなのかもしれない。
サポーターズカンファレンスで岸田社長は
という発言をしたが、その後スペイン代表は各年代で数多くのタイトルを獲得した。
パリ五輪でも男子代表が優勝を成し遂げたが、果たしてその要因やどういうアップデートが行われたのかについての分析はあったのだろうか?
「今後はスペインのカラーも当然変化する部分が出てくると思います。」という予想を言ってたがどうだった?
そもそもスペインの強さはそういうちょっとした表面上のアレンジのような小手先の部分ではなく、もっと文化的な根本的な部分からきているのではないかと筆者は思っていたのだが、クラブが取り入れたかったのはそういう部分ではなく表面的な小手先の技術の部分の方だったのか?
印象として、スペインがやっているのはアップデートだが、徳島ヴォルティスがやっているのはCPU丸ごと取り換えているような印象で、それはアップデートではなくない?
筆者は「積み上げ」とは「良い部分を残した上で改善していく」と解釈している。
積み上げを行うにはまず「良い部分」が何かを整理し、残す必要がある。
徳島ヴォルティスにおける良い部分とは何か?
それは間違いなくJ2を優勝した2020年を参照しなければならないはずだ。
「積み上げ」という言葉を使うのならば、まず2020年の良かった部分は何なのかをを整理することから始めなくてはいけない。
それを土台としたうえで、改善したい部分を取り出して策を提示する必要があるはずだ。
2024シーズン終了後のリリースでも「継続性」というワードが出てきたが、この継続という言葉が指している期間というのは今期後半の半年にも満たない期間のことである。
3年前からの継続性は?5年前からの継続性は?2020年から継続している部分は?という問いには一切触れられない。
今の徳島ヴォルティスに2020年から残っている部分はどれくらいあるのか?
残っている部分を守っていく、失ったものを取り戻す選択が出来ているのか?
それらを放棄するのならば継続、積み上げという言葉を使うべきではない。
継続している、積み上げられているというのなら結論ではなく過程を説明して欲しい。
20周年企画インタビューで美濃部直彦元監督が「晴れの日だけではなく、雨の日も一緒に歩んでほしいです。」という言葉を残している。
筆者としては、雨の日というのは2018年や2021年の勝てなかった時期を指す言葉としては適切であり、雨の日も一緒にクラブと歩むことをためらう気持ちは一切ない。
では今の状況はどうなのだろうか。
筆者の解釈として、今の状況は雨のような自然災害ではなく人災である。
J1のクラブに主力選手が引き抜かれることはサッカーにおける自然災害だが、西谷和希がクラブを去ったこと、これまでのスタイルを基準に獲得した若手選手が次々とチームを離れていく、関わった人々が不幸になっている、これらは間違いなく人災だろう。
自然災害なら一緒に歩めても、人災では無理だ。
掛ける声が同じであるはずがない。
Jリーグ参入初期の弱い時代から応援してきた筆者としては、チームが弱いことは別に大きな問題ではない。
弱くても良いチームはたくさんあるし、そういったチームは応援したいと思える。
ただ、今の徳島ヴォルティスは筆者にとってそういうチームではないということだ。
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