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セブンティーン 二度とは
今日は疲れたよ
うちのクラス、受験生とは思えない賑やかさ お先真っ暗なのに気分は上々ってか!
このひとたちの雲みたいなハピネスに巻き込まれたら本当に危険だと思い立って、意気揚々と単語帳を開いた。昼休みのこと
いちばんハッピーハッピーハッピーって感じの群れが教室に置いてある霧吹きで遊んでたらしくて、そこから飛び出した水がめちゃくちゃ降りかかった 雨漏りかおもたわ
めちゃくちゃかかってめちゃくちゃ腹立ってきて、ブチブチにキレながら移動教室した
で、キレてても仕方ないなと思って燃えたぎる怒り滅した
ハッピーにならなくていいけどカンファタブルくらいではいたいやんか気持ち的に じゃないと一年ももたない
放課後は私立大学の受験料高いよなって話していた
汽車に乗って現地へ出るだけで何万、前日入りするからホテル代も要るじゃんか?
うちらみたいないなかっぺ高校生は勉強だけしてりゃいいってわけじゃないの、経済を考えなきゃいけないのよ
政府へ 大学では学問を究めて必ずやわが国の飛躍と発展に貢献するので、お金をどうにかしてください どうかどうか
帰りの電車は、夕焼けがこの3年間(まだ終わってない)でいちばん綺麗だった。
近くに部活帰りらしきやんちゃそうな高校生4人が座っていて、キモ、とか言われそうで躊躇したけれど、やっぱり記録に残しておきたくてカメラを起動させた。そしたら、やんちゃ高校生4人中3人がおもむろにスマホを取り出して夕焼けを写真に収めようとしていた。
彼らは私が撮っているのを見て自分も撮ろうと思い立ったんだろうか。それとも、自分たちで綺麗だと思って、撮ったんだろうか。
その写真は誰に見せるんだろう。ストーリーに上げるのかな。記念に残しておくためのものかもしれない。
どちらにしろ、あの瞬間、あの夕焼けを綺麗だと思った、その心の動きを私たちは共に有していた。それがなんだか、すごくよかった。
単語帳に降った霧吹きの水滴と、かたちのない不安と、あの夕焼けも
人生のハイライトのどこにも引っかからない一日が、十七のわたしには長くて、長くて、大事で、しかたがない