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カウントダウンはあちらこちらに

半年分の定期券が切れかかっている。

今年の初めに新しくして、もう半年経ったのかと思うと本当に恐ろしい。私の気持ちはまだ5月だし、そろそろゴールデンウィークでもいいと思うのに、天気予報は梅雨入りとか真夏日とか言うからもうよくわからない。
とりあえず、定期券が切れかかっていることだけは確かだ。
今度も半年分の定期券に買い換える。そうしたら、それが切れるのは年が明けてからになる。年が明けても、卒業までまだもう少しだけ学校にいかなければならないから、私は最後に1ヶ月分の定期を買うのだろう。


私を取り巻く、何もかもが、来る日までのカウントダウンをしている。


大学入学共通テストまであと220日だとリマインドされる。この間まで300日だったのに。今月でもう200日を切るらしい。


観たかった映画の特報映像がアップロードされ、公開日が8月の末だと知る。その日付を見て、私の頭は「あと4ヶ月しかない!」と叫んでいる。


まであと、まであと、まであと
そればかりを考える。時間が足りない。努力が足りていない。私はほんと、全然だめだ。時間を切り詰めれば、もっとなにかできるはずだと考える。


今日という日が、私にとって、カウントダウンの数字の一部でしかなくなっていく。


受験生ならば、当たり前のことだ。
なのにときどき、そのことが無性に寂しく感じられる。私は何か残せているのだろうかと。


今日は、「共通テストまであと220日」の日。けれど、決してそれのみではない。
今日は、6月12日だ。
今日は体育でバドミントンをした。友だちと文化祭について話した。数学の時間、クラスメイトが何か面白いことを言ったから、みんなで笑った。世界史で井伊直弼が登場して、おう久しぶりやんけ、と思った。安政の大獄と桜田門外の変をちゃんと覚えていて嬉しかった。英語の授業で解いた、一橋の入試問題の文章がとても興味深くて、夢中になって読んだ。

2024年の6月12日は、これからの人生でもう二度とやってこない。今日と同じ日はもう一生起こらないのだ。




ああ、やっぱり私は今日をちゃんと大事にしたい。
無駄にしたくない。忘れたくない。
大人になってから、あのときもっと何かすればよかった、なんて後悔したくない。

もちろん、必ず訪れるその日を見据えていなければならない。でも、それと同時に、疾風のごとく過ぎ去る今日を、できる限り悔いのないように生き切りたい。


カウントダウンは、いつもあちらこちらにある。あいつらは私たちをびっくりさせ、じわりと恐怖を与える。小さくなっていく数字のわりに、成し得ていないことの多さを知らしめる。
そんなとき、私はしたり顔のカウントダウンたちに、うん、わかってるよ、と澄まして返せたらいいな。そして、まっすぐに今日を生きるのだ。





いつか、すべてが終わったとき。
それまでに積み重ねてきた「今日」を、さわやかに、おだやかに、思い出せるように。


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