持続化補助金のリトライ
パパと友人が、ハンバーグ屋さんの復活を誓った日から二か月。友人の家で二人が集まっている。
パパ:こないだ申請した持続化補助金の結果が出たよ。結果は……不採択だった。
友人:そうか……残念だな。まあ、申請を決めたのが滑り込みだったし、そこまで期待はしてなかったよ。
パパ:申し訳ない。次回の申請様式が出ていたから、宣誓書を持ってきた。とりあえずサインだけ頼む。
友人:え?
パパ:ん?
友人:一回落ちたのに、また申請するのか?
パパ:当然だろ! 通るまでやるよ。
〇何度でもリトライできる
パパ:公募要領のどこにも「落ちたら再申請は不可」とは書いていない。申請チャンスがある限り、何度でも出せばいい。
友人:その発想はなかった。
パパ:私立大学の併願じゃあるまいし、高額の受験料がかかるわけじゃないんだから。
友人:何回までチャレンジできるんだ?
パパ:持続化補助金は、これまで一年に一回しか受け付けていなかったが、コロナ禍以降は、一年に複数回受け付けている。2021年に始まったコロナ型(低感染リスク型ビジネス枠)は、令和三年度では、二か月に1回、計6回の申請受付があった。今年度もおそらく同様になるだろう。
友人:6回までチャレンジできるってことか。
パパ:ちなみに、一度採択された場合でも、前回の採択交付決定時から10か月したら、また応募することができる。
友人:再申請に当たって、どこを書き直したらいいんだろう?
パパ:落ちたからと言って、大幅に直す必要はないよ。
友人:え?
〇必ずしも内容を変える必要はない
友人:内容が悪いから落ちたんじゃないのか?
パパ:それがそうとも言い切れないんだ。なぜなら持続化補助金の審査は相対評価だから。
友人:相対評価?
パパ:例えば給付金の類は、明確な要件があって、それをちゃんと満たしていれば採択される。ところが持続化補助金はそうではない。審査員が各書類に持ち点を与えて、その評点の高い順に採択されていく。
友人:周りの出来次第ってことか。
パパ:そう。例えば、四月頭の年度初め一発目は、制度が変わったばかりでみんな手探りで応募するから、クオリティの高い書類が少ない。だから採択されるために必要なクオリティはそこまで高くない。二回目、三回目と後半になるにつれてレベルが上がっていくと、採択されるために越えるべき基準も高くなっていく。
友人:その理屈で言えば、次はもっと完成度の高いものが集まるんじゃないか?
パパ:そう。だから、内容を根本的に見直す必要は必ずしもないけど、全体的なブラッシュアップはした方がいい。
友人:ブラッシュアップって何をしたらいいんだ?
〇通りやすい申請書
パパ:重要なポイントの一つは読みやすさをあげること。審査官も人間なので、読みにくい書類よりは読みやすい書類の方が「この事業者を応援したい」という気持ちになりやすいだろ。
友人:読みやすさって?
パパ:まずは紙面としての読みやすさ。文字がぎっしりよりは、箇条書きだったり、写真や図を入れるなどの工夫がされているほうが見やすい。
友人:なるほど。
パパ:そして何より大事なのは、申請者の姿が見えてくること。
友人:申請者の姿?
パパ:最近の申請書に多いのが、単なる「お金ください」になっていたり、ウェブ制作会社に利用されているだけのもの。要項に「外部のアドバイスを受けること自体は問題ありませんが、事業者自らが検討しているような記載が見られない場合、採択の対象となりませんのでご注意ください。」と書いてあるのは、こういった申請書を弾きたいからなんだ。補助事業に対する必然性や明確な動機付けが感じられる内容であること。簡単に言えば、「この事業をどうしてもやりたい!」という熱意を、数字と文章で分かりやすく伝えることが、通りやすい申請書のコツと言える。
友人:だからこだわりの部分だけは俺に書かせるんだな。
パパ:そういうことだ。だからお前は、ハンバーグに対するこだわりをもう少し練り直してみてくれ。
友人:熱意、伝わらなかったか? 俺なりに頑張って書いたつもりだったんだけど。
パパ:専門用語が多すぎてな……一般人にも理解できる内容にしてくれ。