「やりたい」が導く選択の時
「転職したい」と思っている社会人はたくさんいると思います。私もその一人です。しかし「いまの仕事を辞めたい」というネガティブな気持ちだけでは、私のようなズボラ怠け者人間は動けないのが現実です。「こんな仕事をしたい」というポジティブな情熱を持ったときこそが選択の時なのだと思います。
「誰かを支え役に立つ仕事をしたい」
接客が好きでおもてなしに興味があったので、新卒で選んだ職場はホテルでした。ただ当時勤めていたホテルにおいて、社員という立場に求められるのは接客だけではなく、事業所内での運営・責任能力でした。
同期が全員アルバイト経験者で優秀だったことや、他の同期に比べてぺーぺーの私に対する先輩からのパワハラまがいの発言、そんな中で同期や先輩社員と同等の責任能力を求められる環境…さまざまなプレッシャーから徐々に私は精神的に不安定になり、結局入社から半年も経たずに退職を決意しました。ただ、次の職が決まっているわけでもなかったため準社員としてしばらくは同じ事業所に残ることになりました。
そうしてこれまでのプレッシャーを感じる立場を離れると、まさに憑き物が落ちたようになったのです。気持ちに余裕ができ、アルバイトスタッフの教育や事業所内のマニュアル作成など接客以外にも社員や支配人に依頼された+αの業務をこなすようになり、そんな働きを買われ新設ホテルの開業時のヘルプに指名されるなど、周囲からの評価も変わっていきました。
ホテル時代の同僚で印象に残っている人がいます。社員時代から私を教育してくださっていた上司で、厳しいですが良い働きをすればしっかり褒めてくださる方でした。資料作成やスタッフ向け消防訓練の計画・実施など上司からの依頼でさまざまな業務をこなし、そのたびに感謝されまた次の依頼をいただくことで信頼関係を築いていく日々でした。自分の力が必要とされているということに大きな喜びを感じたものです。
この頃、とある舞台を観劇し『人間の究極の幸せ』という考え方に出会います。
愛されること
褒められること
役に立つこと
必要とされること
人間の究極の幸せは上記の四つで、そのうち三つは働くことで得ることができるというのがその舞台の内容でした。
これを聞いて、私は真っ先にあの上司のことを思い出しました。一時期は出勤前に毎日泣いてしまうほど精神的に参っていましたが、その上司や同僚に必要とされることで大きなやりがいを感じるようになった今の自分は「幸せ」なのだと気づきました。そして、自分はマネジメント業務そのものより、それを支えるアシスタントのような立場で働くことにこそ喜びを感じる人間なのだと気づいたのです。
これが、私にとっての選択の時でした。
既に私を必要としてくれている人たちがいる環境にこのままいれば自分自身も働きやすく、楽です。しかし、正直このままホテルの雑務をこなすだけでは仕事の幅もスキルも広がらず、何の進歩もないことはわかっていました。頼りになるスタッフとしては認められましたが、責任を持たなければならない立場から逃れた以上、その先は望めません。加えて、「こんな仕事をしたい」という明確なビジョンが見えていました。そうなると、進化を望めない場所にそのまま居続けることが無駄にすら思えてきたのです。そして私は、必要としてくれた人たちが気付かせてくれた自分の強みを他の仕事・職場でも役立てたいと思い、転職することに決めました。
「知りたい」「できるようになりたい」
転職先はIT企業で、SEのアシスタント業務を担当しました。アシスタント業務と言っても、提案書やイベントで配布するチラシのデザイン・作成、社内向けウェブサイトの運営、Excelでの資料作成など、仕事内容は多岐にわたります。
この職場での上司・同僚も本当にいい方ばかりで、私は本当に人に恵まれているなと感じたほどです。他の課の雑務を頼まれることもありましたが、そのたびにこちらが恐縮するほど感謝され、その話が他のフロアにも広がり他部署から依頼が来ることもありました。
これだけでも大変やりがいを感じる環境でしたが、頼まれたことをこなすだけではなく、自分で勉強・工夫・提案することで業務の範囲を広げられる点でもとてもやりがいがありました。掲載依頼された情報をサイト上でどのように表示させるか、こんなExcelのファイルを作ってほしいという要望をどのように形にするか、依頼者と話し合いながら要望を実現できそうな機能を試し提案します。
そうする中で、Microsoft OfficeやWordpressといったツールの知識を付けもっと使いこなすことができれば、ExcelやPower Pointの資料やサイトのクオリティを上げられるだろうと考え、実践的な知識を体系的に学ぶため資格や検定の勉強をするようになりました。取得した主な資格・検定は、MOS Excel 2016 エキスパート、ウェブデザイン技能検定、ITパスポート等です。
学生の頃から勉強することは好きでしたし、Excelやウェブデザインの知識は業務に直結するため勉強したことをすぐに実践することができ、勉強し知識を付けるのはとても楽しかったです。同時に、HTML・CSSやExcelのマクロなど自分には無縁だろうと思っていたジャンルの知識に触れたことで、自分でも知らなかった可能性にも気づき、興味の幅がさらに広がりました。
「ライターになりたい」
現在はまた別の職場に移り、主にExcelを使用する事務の仕事をしています。MOSの勉強も役に立っていますし、この仕事を始めてから新たに覚えた関数や機能も多くExcelの知識は少しずつ深まってはいますが、あらゆる資格を取得し知識を付けていたころに比べると停滞を感じており、漠然と「転職したい」と思う時期が続きました。とはいえ具体的にやりたいことも長らく見つからず、停滞の中で漠然とした焦りを感じるばかりでした。
そんなあるとき、学生の頃から抱いてた物を書く仕事への憧れが再燃し「ライターになりたい」と思うようになったのです。接客から事務の仕事に転職したときと同様の「これになりたい!」という情熱がまた私の中に生まれるのを感じました。そのためにも少しでも文章を書く機会を増やそうとnoteを始め現在に至る、というわけです。選択の時が再び訪れたのだと思います。
世の中に楽な仕事は無いと言いますから「辞めたい」というネガティブな気持ちになるのは当然です。そんな気持ちで選択をしようとすれば、つい楽な方を選んでしまうでしょう。
しかし、その辛さとは別次元の「この仕事がしたい」というポジティブな思いがあれば、人は勇気ある選択ができるのだと思います。更に言えば、やりたいことが明確にわかった時こそが選択の時であり、今が選択の時だと認識したときには既に選択肢はひとつに決まっているものなのかもしれません。そしてその選択の先でも、「知りたい」「学びたい」「できるようになりたい」というモチベーションが人を大きな成長に導くのでしょう。