ピーピーちゃん
ベランダの
室外機の下に
鳩が巣を作った
鳩に居着かれると
フンで汚れるので
片付けようと思った
巣の中には
たまごがあった
一所懸命に産んだのだろう
なんとなくかわいそうで
少しほっておこうと思った
しばらく経つと
雛が孵った
ピーピー鳴くので
ピーピーちゃんと名付けた
ネットで調べて
鳩の生態に詳しくなった
親鳥は毎日
雛に餌をあげていた
ピジョンミルクというものを
雛に与えるらしい
雛はすぐに大きくなった
たまごから孵るのに
二週間くらいしか
かからなかったが
大きくなるのは
もっとはやかった
ピーピーちゃんは
すぐ懐いた
ベランダに出ると
スリッパにまとわりつく
かわいいので
動画に撮って
ネットにアップしたら
再生数をずいぶん稼いだ
時代は鳩か
ピーピーちゃんの成長を
毎日見守っていた
掃除のおばさんが
巣を片付けないように
気にかけていた
雛は短い時間に
どんどん大きくなる
親心が芽生えているので
たくましくなるのが
とても嬉しい
ピーピーちゃんが
まだ短い羽を
パタパタさせながら
クルクルと回っているのを
眺めているのが
幸せだ
ピーピーちゃんは
いつ巣立つだろう
離れていくのが
少し寂しい
ピーピーちゃんより
私のほうが
置いていかれたような
不安におそわれる
ピーピーちゃんは
立派になっていくのに
私はなにも変わらないまま
ピーピーちゃんの
育ちを見ていながら
自分の育ちを
ふり返っていたのかもしれない
ピーピーちゃんが
ひとりで生きて
いけるようになったとき
私もひとりで
生きていけるだろうか
ピーピーちゃんは
ピーピー鳴きながら
羽をパタパタさせて
私の足元を
楽しそうに
回っている
ピーピーちゃんが
羽ばたいていくとき
置いていかないでと
泣くようなことはしない
ピーピーちゃんが
空に向かうとき
私も舞い上がり
胸を張って
生きていこう