田舎の空

久しぶりに田舎に来たのに
雨戸を閉め切りひきこもり
天気もわからない
部屋の空気がこもって澱む
部屋はその人の心を映す
そんな言葉を思い出す朝

知り合いに
そうLINEを送ってから
だいぶ時間が経った
田舎の生活にも慣れてきた
いちめんのクソミドリ
悪態も軽口のうちだ

田舎の空はとても広い
都会の喧騒の中では気付かない
遠く高い目に鮮やかな白と青
忙しい日々の中で
見上げることを忘れていた

少し前までの生活に
当たり前にあった
オシャレな店も
流行のスポットもない
映えない街
犬がいるのが幸いだ

ここには欲しいものはない
探しても見つからないだろう
きらびやかな都会の街とは違う
ゆるやかに流れる時の中で
ただぼんやりと空を眺める

アルコールを飲む量が減った
それほど酔わなくても生きていける
何かに追い立てられるような
焦りがあまりない
刺激のない退屈な暮らし
望んでいたわけではないけれど

なにを求めて生きていたのか
よくわからなくなる
面白いこと楽しいこと
キレイなものかわいいもの
たくさん欲しいものはあるけれど

都会の街にあったものは
田舎の街には何もない

深呼吸して空を仰ぐ
吸い込まれそうな青
白い月が浮かんでいる

ここには何もないけれど
空はどこまでも澄んでいる