天野鳩介

「もうひとつの世界が始まり、終わる、ごく小さな裂け目」詩を書いています。

天野鳩介

「もうひとつの世界が始まり、終わる、ごく小さな裂け目」詩を書いています。

最近の記事

つどい(アクロスティック) 

うそをこばみ つくろわず くるしむひとびとを しいたげることなく いきものすべてをみつめ くさすことのない にんげんのつどい               

    • 秋の夜長に…

       秋の夜長に 昔話をお望みなら、 海底で眠るタイタニック号が その望みを叶えてくれる。 沈没船には付き物の亡霊たちが、今でも 朽ちた甲板に集まって 夜な夜な 昔話に花を咲かせているから。 あの日あの時までは 交差することのなかった物語。 涙抜きには語れない それぞれの人生の昔話。 そして昔話が済むと きまって議論がはじまるのだ。 神の気まぐれにより、惜しくもピリオドを打った 人生の 真なる意味について。  夜がべそをかくのも 時間の問題だろう。

      • いつまでもどこまでも…

        いつまでもどこまでもついてくる 「今」という時——ビッグバン氏の忘れ形見 ちょっとでも隙を見せたなら最後 アイスクリームも溶かしてしまう   そうはさせぬというならば アイスクリームを地面の奴の大口に 投げ込むことだ さすればアイスクリームも最後 お前も最後 「今」の奴も最後というわけさ

        • 旋回 【詩】

          魚かな ムクドリ 群れて  大きく 旋回 黄昏に うろこ 燃やして 奇怪な 転回 竹やぶへ あわて 飛びこみ 夕べの 宴会 三日月に おやすみ 言われ 夢へと 散会

          某国の首相が… 

           某国の首相が、夫人に内緒で ピーナッツバターを舐めていた ちょうどその時、 動物園から脱走した ハイイロオオカミが  トンネルに姿を消した。 しかし、しばらくしてトンネルから出てきたのは  一人の毛深い男だった。 人間になりすました オオカミだったのか、 妥当なところで オオカミ男だったのか、 それとも……。  教訓のない教訓について、 とりとめのない話を 延々と聞かされた  その日の夜、半年ぶりに 白い大蛇となった夫人は 長々と 夫を締めつづけた。 言い訳がましく 骨が笑

          某国の首相が… 

          夢を喰うのが…

           夢を喰うのが獏なら、 夢を吹き込むのは タツノオトシゴだ。 耳の穴に そっと 口を差し込んで。  それが良い夢か 悪い夢かは、 ダーツの結果次第。  プレイヤーは 海神トリトン。  矢は カジキ。  的は 君。

          夢を喰うのが…

          趣味の時代が…

           趣味の時代が到来した。 屋根裏から きこえてくるのは ネズミのオーケストラ。 聴いてみると これが案外悪くない。 そうだろう?  下の階では ホシムクドリが ピアノ協奏曲第17番 第3楽章の主題を  得意げに口ずさんでいる。  私はといえば、相変わらず口笛が吹けなくて  ティースプーンで 前歯をカチカチ鳴らすばかり。  町外れにあるアンティークショップの 埃をかぶった ドールハウスのダイニングで。

          趣味の時代が…

          犬 【詩】

          去年の夏  わたしは  ある風変わりな 犬を預かった  そいつは朝がくると ベッドへやってきて 散歩に連れて行けと吠える   一日二食のこさず食べ おやつもペロリ 食後はかならずうたた寝し 頭を撫でればしっぽをふり 犬と出会えばしっぽをふり お手と言えば首を横にふる…… なかでも奇妙なのは 離れ離れになったいまも わたしの心を噛んで離さない その笑顔 走って笑い 暑くて笑い 嬉しくて笑う 向日葵のような その笑顔!    だが驚くなかれ 学者が言うには  犬は笑わない

          犬 【詩】

          黒いピエロ 【詩】

          今夜  流れる星の降る丘で わたしは待つ ピエロが現れるのを 赤いピエロではなく 黄色いピエロでもない 黒いピエロを そして撃つつもりだ ブリキの銃で一発 やさしい彼は よろこんで死んでくれるだろう 月に照らされて なじみの顔がほほ笑むだろう あすの朝 眠りから目覚めたら 朝日に涙がかがやいて  なにもかも忘れているだろう 流れる星の降る丘の 黒いピエロに誓って

          黒いピエロ 【詩】

          あきちゃん 

          あきっぽいあきちゃん あきくるまえに あきにあきあき なつなつかしみ ふゆにふーあーゆー じぶんのなまえにも あきちゃって かってにはると なのったとさ あきれるね

          あきちゃん 

          あかいふうせん 【詩】

          あるひあるとき あたまのうえに ありんこのせて あかいふうせん あかるいそらへ あてどないたび あらぬかたから あらわるすずめ あいさつとばし あらぶくちばし あかいふうせん あなぼこだらけ   あっというまに あかいふうせん あえなくおちて あにはからんや あっけらかんと ありんこあるく

          あかいふうせん 【詩】

          野球の規則 【詩】        

          何度 盗み 盗まれても 進むほかないのだ このゲームの中でも 何度 殺し 殺されても 生還すれば良いのだ このゲームの中では 何個 ボールが交換されようとも お前は交換できない お前はお前しかいない このゲームの中にあってさえ

          野球の規則 【詩】        

          ダヴステップ(dovestep) 【詩】

          今夜は踊ろう ハトのステップで    ダヴステップ ダヴステップ ダヴダヴダヴ    スズメもカラスも人間も 炎を囲んで踊りましょう ハトのステップで   ダヴステップ ダヴステップ ダヴダヴダヴダヴ 「ハトさんはいつ来るの?」 「ハトさんは来ないよ」カラスがいった 「きょうの朝、ヒナを猫の奴に食べられたから」 今夜は踊ろう ハトのステップで   ダヴステップ ダヴステップ ダヴダヴダヴ   スズメもカラスも人間も 炎を囲んで踊りましょう ハトのステップで   ダヴステッ

          ダヴステップ(dovestep) 【詩】

          狩り 【詩】 【短歌】

          境川に 白サギ一羽 降り立つ 時のはざまの しじまの裡に 足どりは 哲人のもの 黒脚が 水をふるわせ 波紋を起こす 恐怖でも 冷気でも ない かの弦を はじき 魚を踊らせるのは 彼女は いま   真剣な狩りの最中 時間さえも 見とれてしまう

          狩り 【詩】 【短歌】

          水族館にうってつけの日 【詩】

          誰が何と言おうと 水族館へ行くのは雨の日に限る 梅雨ならなおいい 少し後ろめたくなくなるから それに昔を思い出すから ずっとずっと昔を 私が私じゃなくて 君も君じゃなくて ヒトがヒトじゃなかった頃を あの頃は  今ほど雨音は聞こえなかったけれど もっと自由だった 小さかったけれど からだ全部で世界を泳いでいた たとえ巨大な口に 飲みこまれる運命にあったとしても 今すっかり大きくなって 耳は雨音を聞くためにある それからクラゲのおしゃべりも 雨の日は水族館にうってつけの日

          水族館にうってつけの日 【詩】

          さんぽ 【詩】

          めが そらを みみが ことりを  はなが はなを あしが みちを こころが わたしを おしえてくれる  さんぽ

          さんぽ 【詩】