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音の三大要素について 第七回

この記事を書いたのは 山岡さん.

0. 前回の内容

前回は音色の概念と音色を定量的に評価するために扱われる指標について紹介しました。
まだご覧になってない方はぜひ下のリンクから読んでみてください。

1. この記事から分かること

ラウドネスの測定の歴史的背景(1900年代)とその課題

2. ラウドネス

以前の記事でも紹介した通り、ラウドネス(loudness)は音の主観的な大きさに対応する指標です。
本節では、ラウドネスの計算方法の考え方について紹介していきます。

ラウドネスの測定の歴史は、大きく2つに分けられます。
最初の部分は、Fechner(フェヒナー), Delboeufなどによる 19 世紀の研究で、ラウドネスの測定に関する心理物理学的問題を提起しました。 第2部では、Piéron, Richardson and Ross, and Stevens.による 20 世紀初頭のラウドネス測定の研究が該当します。

本記事では、19世紀にどのようなことが研究され、発表されたのかをピックアップします。

2.1 19世紀の心理物理学的問題

音の大きさやその他の知覚的事象の大きさを測定するための最初のステップは、感覚生理学者、心理学者、物理学者の間で「the psychophysical problem of intensity」と呼ばれるものに対する認識が高まった19世紀後半に始まりました。

ラウドネスの感じ方は、刺激の物理的な尺度とは異なります。
それにもかかわらず、ラウドネスが音の物理的な大きさに正比例するように、その物理的な大きさと知覚される強さは釣り合っていると想定されることがありました。 その感覚から実際にJohann Krügerは、1743年に感覚の強さと感覚を生み出す物理的刺激の強さとの間の単純な比例規則を導出しました。

しかしながら、1 世紀後、フェヒナー は『Elements of Psychophysics』の中で、直接的な経験において、感覚の強さと物理的な音の強さの間に、比例関係が成立しない場合があることを認識しました。

経験について、彼は次のような言葉を残しています。
「400 人の男性の合唱団は、200 人の合唱団よりも有意に強い印象を与えなかったという声明を聞いて、非常に興味深いと思いました」

400人の合唱団の声の平均 (二乗平均平方根) 音響パワーは、原則として、200人の声の約2倍になるはずです。
しかしながら、ラウドネスの違いは、2対1ほど大きくはありませんでした。

フェヒナーは、知覚的経験と、それらの経験を生み出す原因となる刺激事象の対応する特性との間の区別を作成または認識した最初の人物ではありません。 この区別は、紀元前5世紀のDemocritusの有名な格言(2,000年以上前)や17世紀のLockeまでさかのぼりますが、フェヒナーは、刺激と感覚の間に量的および質的な違いがある可能性があることを最初に認識した研究者でした.

特に、フェヒナーは、刺激の物理的強度の変化と、それに対応する知覚経験の量的変化との間の量的差異を指摘しました。 彼は、知覚される強さが物理的な強度とどのように相関があるのかという問題に取り組み、物理的な強度が絶対閾値に等しい単位で計算される場合、感覚の強度は物理的な強度の対数に比例すると述べました。この法則は、「ウェーバー・フェヒナーの法則」と呼ばれています。(ウェーバーの法則を弟子のフェヒナーが発展させて導き出したので、ウェーバー・フェヒナーの法則と呼ばれています。)

「ウェーバー・フェヒナーの法則」は数式では以下のようにあらわすことが出来ます。

$${P =Klog_e\frac{I}{I_0}-(1)}$$

(1)式の各変数は以下の意味で用いられています。
$${P}$$:感覚の強さ
$${K}$$:刺激固有の定数(刺激によって異なる)
$${I}$$:刺激の強さ
$${I_0}$$:感覚の強さが0になる刺激の強さ

この法則をより簡単に表現すると、私たちは外からの刺激に対して鈍感であるのではないかということを表現している法則です。
例えば、うまみ成分や辛味成分の量を倍々にしていっても、味の感じ方は倍々に感じないことを表しています。
上記の例からも、感覚の鈍感さや評価の難しさを感じていただけると思います。

識別の尺度から感覚のスケールを構築するというフェヒナーの提案は、感覚の大きさは、少なくとも科学的に意味のある方法ではなく、内省によって数値的に正確に評価することはできないという彼の見解に部分的に基づいていました。

ただ、フェヒナーの一般的な感覚測定、特にラウドネスの測定へのアプローチは、洗練されているとはいえ、特に有用であるとは証明されていません。
そして、このアプローチは、適用するのに非常に手間がかかります。この批判は、考えられる刺激のすべてのペアの相対強度をペアごとに比較する必要がある サーストン(1927) のアプローチにも当てはまります。(サーストンのアプローチについてはの「音声/音質の評価方法 第2回|Empath研究所|note」を参照して下さい。) 

また、19世紀後半から 20世紀初頭の研究者は、間隔が等しい感覚尺度を作成するためのいくつかの方法を開発およびテストし始めました。
その内容については次回の記事で紹介します。


3. まとめ

今回の記事では、19世紀にどのようなことが研究され、発表されたのかについて紹介しました。
重要な点は、

・「the psychophysical problem of intensity」という問いから研究が始まった

・ウェーバー・フェヒナーの法則が提唱された。


ウェーバー・フェヒナーの法則は直感的には正しそうに感じるが、ラウドネスの評価に特に有用であるとは証明はされていない

です。
次回の記事では、20世紀における、ラウドネス測定の研究について紹介します。

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