4 19返答詩集 日記詩集 おまけトーク(理不尽なことに見えても)
⒑
完成した絵の前で彼女は立ち尽くしていた
ただの後ろ姿でしかなく
風景の一つであり
一つの場面でしかなく
探していたものは見つからなかったのだった
届かない…
もう限界なのか…
描き続けるのは
果てに何かを見たかったからだった
出会えないなら
一体何の意味があるのか
破こうとして手をやった
こんな絵しか描けないなら 絵を描く意味がもう分からなかった
自身への深い失望であるのと同時に
画家として生きていくことへの絶望だった
「今まで何度思っただろう」
死にたいという言葉は
生きたいという祈りだったのかもしれない
今が過去とは違うということを理解していても
抱えた痛みの中に心が存在する時がある
どれほど努力をしても
過去から逃れることはできないのだろうか
平穏な日常に突然背後から襲いかかり 気力を根こそぎ奪い取る
守りたいものさえも 苦しみに耐えるうちに手放してしまう
残ったのは空っぽの自分自身
自分への失望は 今を懸命に生きようとする意志を抉(こじ)る
救いなんてこの世界には存在しない
生きることが苦しい
目覚め 歩み 呼吸し 眠る
些細なことを積み重ねて終える日常が
自らの手で自分を傷つけても
自らが砕いた残骸を拾い集めている
生きているから出会える喜びを信じていたくて
信じられるだろうか 今日という陽を歩みながら
出会える時を 待ち続けて
今日は死なないと決意する
胸の内に抱く願いが この命を繋ぎとめている
「美しき星」
闇を抱え 輝こうとする命は
それだけで美しい
伸ばした指先は光を希う祈り
歩む答えはもう出ている
命を賭けて歩む覚悟を誰も背負えはしない
歩みはそれだけで光そのもの
闇の中で光り続ける
自ら光ることのない月を照らし出す星
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