4 12 詩集 返答詩集 日記詩集  おまけトーク(興味が人間関係を広げていく)




触れられなくても
続けていれば次の歩みとなっていく

伝えられなかった思いは
願いに繋がっていく

届かなかった歩みを繰り返し
いくつもの出逢いと別れを経て
思いは絵という形になっていった

一見しただけで気に入り店に置く人
置いたものを客が気に入り興味を持つ人

季節ごとの絵や店の雰囲気に合うものを
頼まれることがあれば

部屋に飾りたいからと
個人的な注文を受けることも増えてきた

励ましの言葉は挫けそうな時に勇気となり
描き続ける新しい理由となっていく

しかし彼女にはどうしても分からなかった
絵の何を人が気に入ってくれたというのだろう

知りたいと思うのに 知りたくて仕方がないのに
誰もが口を開くと 漠然としか出てこなかった

何が人の心を掴んだのかを知りたくて
蜃気楼のように手応えの無いものを
探しているみたいだった

「時を越えて」

線路の始まりはどこだろう
どこまで続き
どこで終わるのだろう
人里離れた山の奥から
人溢れる街中まで
線路は続いていく
夕陽を浴びて
帰路を急ぐ人を乗せて
帰りを待つ人への想いを運ぶように

駆け抜ける町並み
通り過ぎる田園
闇の中を射抜くように過ぎ去り
山を一望し

あの時降り立った場所へ
この道は続いているのだろうか

あの時始まった何かへ
この歩みは紡がれていくだろうか

「とあるお店にて」

ⅶ・働くということ 温もりがそこにあるという希望

言葉にできないことに
生きることの手触りがあるならば

言葉にしきれない中に 胸に抱いた想いの中に
想いとして感じ取ることのできない刹那の波に

言葉の奥底の 言葉以前の揺らぎの 想いの深淵の彼方に
大海原 空 宇宙のように広がる 感じ得る全てに

生きることの本質が横たわっている

何かが違う 違和感 憤り 不満さえも
求める物を知るための手がかりとなる
一瞬の煌めき

周りの顔色をうかがい 周りの主張に合わせ
自分の想いを誤魔化し 感じたことを押し殺すならば
胸の奥に渦巻く感情の存在を 無いかのように振る舞うならば
苦しみにすら耳を貸さずに生きていこうとするならば

人は自らの感じたことを 感じ取れなくなっていくのではないか
自らの内に抱いた想いを 信じられなくなっていくのではないか
何の意味があるだろうか 自らに疑問を抱く時
人はただ働くだけで自らを失っていく

金銭を時間と引き換えに手にしたとしても
人としての存在自体も失っている
達成できない者たちは自らの力の無さを恥じ 失望し 責められ
終わりの見えない努力の果てに 生きる価値を見失い 壊れていく

何かを与えるだけが仕事であるならば
そうではない人は生きていく価値がなくなるのか
仕事ができないとされる人間は
生きていく価値がないということになるのか

人の命の価値は能力の優劣で決められるものだろうか

人がここにいるという 温もりが命の全てであり
ただ人が無心に 生きている瞬間に 生み出されたものが
誰かに届く時 人という存在が 何よりも与えていることになる

「生きているのは自分一人だけではない」と人に触れて知ることは
何にも代え難い 励ましとなり 勇気となり 生きる力となり 喜びとなる

ただ生きていたいというだけではない

生きているということの感覚を知るために
出会いを求めることが生きるということ

自分らしく生きるための導きは 心の奥深くに 星のように廻っている

3「言えない想い 癒えない痛み」

言いたいことがあるのに 言えないのはどうして

口にしても 心で想っただけでも
理由のない涙が出てくる

どれだけ探しても 理由が見つからない

触れだけで溢れてくるから 近づくことさえできない

孤独に閉ざされて
想いが胸の内を彷徨っている

誰にも言えないから 心に鍵をかけて閉ざしていた
別に辛いことは何もないというのに 日常がこんなにも空しい

平穏なはずの日常に 押し寄せる洪水のように
飲み込まれる悲しみに 言葉なんて意味がない

生きる苦しみは現実には見あたらない
必ずしも現実に伴うものでもない

心の中にあるから 誰にも見えない

自分だけの世界であり
痛みは自分であり

現実が平凡であればあるほど
胸の痛みはより鋭く 理由は消えて 痛みだけが残る

理由がないからこそ
救いがないのかもしれない

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