4 16 詩集 返答詩集 日記詩集  おまけトーク(無理にラックを買わなくてもこれでいいんじゃないか説)



陽が沈んでゆく
星が瞬きだす

雲が棚引き
風は衣のように

閉ざされた闇を射抜くように
月明かりが照らす 光を受けて像の後ろ姿は表れる

月が舞うキャンバスから手を下ろして
彼女は一息つく

後ろ姿の像を見やる
見れば見るほど不思議だった
引きつけられる…

店主から譲り受けた像の作家は分からなかった

誰も知らない像は
世界から置き去りにされたかのようで
一体どんな作り方をしたらこんなふうになるのか…

今にも動き出し 去ってしまいそうなくらい儚く
気づけば手を伸ばしていた

はっとして―無意識に伸ばした手を見つめて
そのまま暫く動かなかった
彼女自身が静止画になってしまったかのように

「生きる場所」

見えない奥底の彼方の星よりも遠いのに
心臓の鼓動くらいに近すぎて触れられなくて

眠りのように訪れ
家のように帰る場所

旅のように移ろい
季節のように廻る世界で
ずっと変わらなかったもの

どんなに探しても見つからないから
遠くに目を凝らすとますます見失う

探すのを止めて閉じた瞼の奥に広がる景色
夢の最果て

世界でたった一つ
自分の中だけにある 還る場所

「美しきもの」

美しいものに心を奪われている瞬間
心の中に煌めく豊かさを形作る 神秘の時間

心の中に幸せを育む創造の時間
生み出すのは 豊かな自分という人間性

この瞬間のために生きていると
信じられるような

触れる者全てに宛てられた手紙のような
生きることへの肯定が宿っている

この美しさだけは
人間である限り約束されていると信じている

「故郷―夢の彼方―」

7「故郷」

心の中にしかないから
世界をどこまで探しても見えなくて
近くなのに 彼方にあって

誰も見えないほどに深く
自分の中にしかないもの

どこかを探しても見つからなくて
虚しくなるのは この心が空っぽだからではなくて
心の中にしかなく 自分だけに感じられるものだから

心が感じる美しい日々のように
眼を瞑った先にあるもの

星のように
彼方で光り続けるもの

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