高橋順子「高橋順子詩集」


海に惹かれて 海を泳ぐように
海の中へ飛び込むように 水の流れていく先を辿って行った

降り注ぐ雨に打たれて
重さが命を支えて救っているなんて

かのリルケのように 地球の重さに
想いを馳せたのか

夏が終わっても 時が過ぎても
終わらない 記憶

海と 空の遠くを眺める感覚と
重なる波と 星の光

自由という残酷さを目の当たりにして
厳しさの中で立つ 広すぎる海と
深すぎる空の間で 目を開ける

それは言葉を唄った 祈りのような 言葉

時は変わっていく
残された時間は減っていく

何を切り取るのか
その目に映る 何を 詩にするのか

鳥を見る時
羽ばたく鳥に 自分を見る

海を見る時
その一部に 自分を見る

小さすぎる自分の欠片
大きすぎる世界の破片

自分を散りばめるように
想像力が 羽ばたく鳥のように

小さな自分だから
心は どこまでも行きたい

見渡した海の向こうの どこか知らない世界と
地平線と 空が混ざって 空と雲が 波打つ海のようだった

一人の詩人である前に
一人の人間である前に
一人の女である前に
一つの命だと 言葉が訴えていた

その矜持を 私は持っているだろうかと 考える
覚悟も 勇気もないままに 言葉を綴る弱さを 思う

波を一つすくって すくった端から零れて 海に帰っていく
波の音 呼吸の音 鼓動の音 星の声

どこまでも一人だから どこまでも繋がって
筏のように信じた言葉に乗り込んで

どこまでも 旅をしたい

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