7 6 詩集シリーズ




詩集 日々を生きる
「微笑み」

何だか哀しい
秘密を湛えているのかもしれない

微かな日溜まりのような
零れたのは優しさかもしれない

思想詩集 光と闇の物語
六章「兎の物語」

月には兎が住んでいます

月は海底のように静かで
とても寒い場所で 白銀の砂漠のようでした

森にいた時
見上げた夜空に浮かぶ月は とても美しく

兎は月へと跳んでみたいと思いました

どんなに跳んでも月には届きません
近くにありそうで どこまでも遠いのでした

兎は目を閉じます

一緒にいた家族はどこへ行ったのでしょう
愛するひとはどこへ行ったのでしょう

兎は眠ります

覚めることのない夢のような
とても永い眠りでした

兎は思います

もしかしたら
月にいるのかもしれない

兎は海よりも深い眠りに落ちました

目が覚めると兎は月にいました

どこまで行っても見渡す限り一面の砂ばかりです
想い焦がれた月はとても殺風景な場所でした

寂しいから
月は美しく光っていたのかもしれません

兎はあるものを見つけました

キラキラと光り輝く陽だまりのような
チラチラと鱗粉のように光の粒が降り注いでいました

とても暖かくて 家族がいたことを思い出して
兎の胸を 温かく満たしてくれました

雨のように降り注いで 月は冷たく弾いて
闇の中に散って 消えてしまいます

兎が手を伸ばしても 届きませんでした

彼方には蒼く輝く星が見えました
あの星に光が届きはしないだろうか 兎は考えました

光は月に降り注ぎます

とんとん たった
兎は餅をつくように光を打ちます
こねて また打って
練って 束にして

とん とん たった
兎は光を集めた光を放ちます
あの星に届けようと思ったのです
光たちはやがてあの星に蒔かれるのでしょう

星の光に乗って降り注ぎ
風に舞って花へと訪れ
木の葉や川の煌めきとなって
たいせつなひとの傍に 辿り着くのでしょう

返答詩集 出逢いと旅 別れと続く道
「孤独の道」

胸に空いた 深い穴を
埋める為の 旅に出る

歩んでも 手には何も残らなくて
夕陽は綺麗なだけで 途方に暮れた瞳を照らす

すべてが空しい気がして
空っぽなはずなのに 零れ落ちた滴は
荒野に染みをつるく

何のためにここまで来たのか
意味をなくしていたから
未来も見失っていた

今という時を零さなければ
呼吸のできない場所で
生き延びられなかった

生きることでしか この空っぽの手は満たせない
歩き続けることでしか この歩みは報われない
光が虚しくても生きていかなければ この世界に朝陽は来ない

止めてもいい
挫けてもいい
逃げたってかまわない

どこに辿り着くとしても 鼓動が誰にも聞こえなくても
震える手には 伝わっている

声が涸れても 涙が枯れても
温かな血が胸の中で巡り
生きることを 叫んでいる

# 5
星の欠片 心の断片
二部 星と心
二章 光の欠片

宙の下で

星が廻り

雲が漂い

道が遙か

どこまで続いていくのだろう
後ろにも延々と続いている

行く先はきっと決まっていた
来た場所が描いてきたから

辿ってきた道が 未来を導いている
過去と今の繋がりのように

未来へと想いを馳せて心が奏でる
紡ぐものが道のすべてを照らし出す

道が続く

雲が流れ

星が唄い

歩んでいく

思い出を積み重ねるように出会いを繰り返す
光を探す渡り鳥のような軌跡だったのかもしれない

誰かの場所と 知らないうちに交差して
想いを分かち合いながら 旅をしてきた

否定されて 傷つけられて 涙が過去の傷跡に触れて
過ちが流れ落ちなくて 許されない過去が怖かった
すべて心の中で起こったことで この世界のすべてだった

涙は零れるばかりで 触れられなかった
心に描いた温もりが 流れ星みたいに出会う
最初から ずっと輝いていた

10

時が 雲を流し
空を塗り替える

年月と共に 命を刻んでいく
生きた月日が 重なっていく

消えることなく どこかに降り積もり 眠っている
もう一度目覚める時を待っている 夢の欠片

今歩いているのは 最初の一歩があったから
出会ったのは 生まれた命が鼓動を続けたから

今からでも遅くない
必ず未来は訪れる

11

どんな言葉でも 信じられるなら
この世界に溢れる言葉の すべてに意味があるのなら
耳を澄ませて 声が聞こえたなら
真実は心の中で鳴っている この心臓の 鼓動と共に

12

―夜明け前

闇が濃くたちこめて
深く覆いつしている

未来は見えないから
疑い始めたら分からなくなる

信じられるものが信じられなくなった分だけ
揺らいでしまう 零していくように 失いそうになる

輝く星に手を伸ばしているのに
近づくどころか遠ざかっている気がする

背中を支えてくれるのは
いつだって自分の努力で手にしてきたものだけ

何とか生き抜いてきた積み重ねが
足元を照らしてくれる

闇を歩き続けるために
この手に灯した光を 必死に握りしめて

ずっと続いていく道を
今もこうして歩いている

夜明けを―待ちながら

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