伊勢華子について

「みみをすませば」

本を一つ読むたびに
石のようなものが心の中に落ちていく

どうすればいいだろう
確かめているうちに時間なんてあっという間

過ぎていく未来へと歩いていきたい
でも飲み込まれていく過去に置いていきたくないから

限られた時の中で
この手で持っていけるのはどれくらいだろう

自分を大切にするということは
途切れた声をなくしてしまうことなく
形にしておくことかもしれない

どんなにそばにいても
限りなく遠いことがある
一緒にいても、同じ景色をみていない、時がある

それが悲しくて 諦めていたものが
本当は、悲しく思えることを、大事にしていいんだって、思う

守ってあげるのは
やっぱり自分しかいないなら

物や、限界や、制限を越えていける唯一の武器は、心なのだと、思う
その自由さを、信じたい

悲しみや苦しみに負けないだけの
希望や未来や明るいものを

美しくはないものに埋もれても取り戻せるだけの
きらきらしたものを この胸に


「せかいでいちばん美しいもの」


これほど心を奪われた本が かつてあっただろうか
仕事について考える西村佳哲氏のことが書いてあるからと読んだ
たしか あれは、「働かないひと。」だっただろうか

その中で偶然目にした伊勢氏の記事に 目を奪われた

世界中の子供たちにとっての宝物を聞いて回って、本にしたという、夢が詰まった本のことが書いてあった。しかも、それを見て本の業界に飛び込んだ編集者に、出会って、あの時この業界を選んだことは、間違いじゃなかった、という絵本みたいな話

当時 詩を書いていて、誰かに届けたいという思いだけが強くて
でも伝えられるだけの技術がなくて、もがいていた頃
その言葉は未来を照らす一筋の光のように見えた。

この道を 行こう
ずっと――ずっと
果てしなく 続くとしても
その果てに 辿り着くまで

 それから「せかいでいちばん美しいもの」に出会うまで、時間はかからなかった。

 泣きたいくらい、素敵な本だった。
全てが愛しく かけがえのないあの頃を
真空パックしたような そんな言葉たちが
目に眩しくて 理由の分からない涙をこぼしながら

読んでいた

こんなふうに 世界を見てみたい
こんなふうに 生きていたい

―――――そうして、月日が経って
あの頃の理由の分からなさを、言葉にしようと思って
言葉にしたものを、詩にしようと、思った



いつか、本にしたい。
本にしたときに、あなた出会った感動が、私をここまで連れてきてくれましたって、感謝を伝えたい。


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