5 36 詩集 リバイバル おまけトーク(電球について)
詩集 百花繚乱
「葦(あし)」
一面に揺れる茶畑のような幾万の囁き
しなやかな腕は指揮者のように風に揺れる
姿一つ一つが音符のように
聞こえない音楽がここに奏でられたのだろうか
ただ己のままに 求めることなく
風に従順となり 音は舞い降りる
去りゆく陽が寂しげに微笑む
まだ演奏は終わっていない
陽は沈んで冷たい風が流れ込み
別れは哀愁を誘う
奏でられた楽曲は終わることはない
陽が沈めば次は星が煌めき出すのだから
光が零れ闇に消えていく
星達の光に応えるかのようにさわさわと揺れる
これは終わらない唄
耳を澄まし 目を瞑り
風に運ばれ やがて聞こえる唄は何を描いたのだろう
#3 月と太陽
五章 「風」
窓から光が射し込む
手の届かない 遠くの空に
全てを染める青が広がる
カーテンが靡(なび)いて
ゆらゆらと舞う
奔放な客人
手に 頬に 首筋に 耳元に 髪に
そっと触れて
去っていく
どこか遠くの空気を連れて
心地よい余韻を残す
空の旅人
山脈の険しい岩肌を駆け上がり 草原の柔らかな絨毯を撫で
波のようにうねり 滝のように怒濤となって降り注ぐ
思い通りになることはない 自由の化身
万物に語りかける
飲み込むように 洗い流すように 連れ去るように
木の葉が散っていく 舞い踊り 青い世界へと吸い込まれる
― 一陣の風 ―
後ろから木の葉がひらりと目の前で揺れ落ちる
拾い上げて空に翳すと羽根のよう
旅に終わりはないのかもしれない
世界を巡り巡って 一体どこへ行くのだろう
時のように 水のように 心のように
いつかまたどこかで会えるだろうか
言葉は想いを乗せて 舞い上がる
六章「時」
どこに行き着いて 何を運ぶのだろう
始まりはどこなのだろう どこに向かっているのだろう
果てを知りたくて 想いを巡らせようとも 辿り着きはしない
生きていること 命があること
世界が動いて 回っていること
止まることなく 戻ることもない世界
過去でもなく 未来でもなく 今しか存在できないのなら
過去も未来も無く 本当は今だけが存在するとしたら
過ぎ去ったものはどこにあるのだろうか
過ぎたものに想い馳せる時 過去とはこの世界にではなく心にあるものなのか
時は感情という煌めきとなって
心に雪のように降り積もっていくのか
途切れることのない音楽のような
絶え間ない花火の瞬きが失われるとしても
移ろいゆくものは
この世に存在したものが残した余韻
時の揺り籠に抱かれて この命は今日も鼓動をしている
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