7 2 詩集シリーズ (人生初池袋)



詩集 日々を生きる
「温もり」

伸ばした指先を掴む
小さな手

一つの大きな指にも満たない
小さな指たちが掴んだ

弱々しくもできる限りの
一生懸命な力で

指が掴んだものは
未来かもしれない

思想詩集 光と闇の物語
「月と夜と」

月は静かに光る

眩く 消え入りそうな儚さで
勇気づけるように力強く
傷ついた後ろ姿のように弱弱しく

月は夜の背中に隠れてしまう

夜が尋ねると
月は自分の放つ光が怖いという

夜にはよく分からなかったけど
月には月の苦しみがあるのだろう

夜はとてもきれいだと言うと
月は縮こまって消えてしまった

うっすらと月が現れた

声までも消えてしまいそうな声で
光ることが怖い理由を語り始めた

思い詰めたような声だから
夜は静かになって聴き入った

風が止んだ
木が佇んだ
花さえも動かない

この光は自分ではないから
静かな闇の中で月はいつも震えていた

次は光らないかもしれない
そしたらみんながっかりする

光らない自分なんて意味がないと
月は言う

夜は暫く考え込む
どうすれば届くのだろう

二人は何も言わずに佇んで
沈黙を埋めるように

風が動き始めた
木々がさわさわと揺れて
花がさわさわと囁いた

ただの同情では伝わらない
嘘では意味がない
だから自分の話をしようと 夜は思った

月は静かに夜の話を聴いていた
優しく受け止めていた

全部見えないなら 全部一緒
夜にとっては みんな同じ

光は賑やかで楽しいけど
光らなくても構わない

色も 姿も 形も 何も関係がない
月は静かに聴いていた

月はきっと怖いのだろう
光らないことがではなく
光らない自分が受けいれてもらえないことが

でも夜には月が分かるから

光も影も月の一部で
本当に光らなくなる時が来るまで
光っている月を見たい

月は静かに微笑んだ
金色に輝く虹のように
真珠のように 涙のように 夜に輝く太陽のように

月は眩く 優しく 光り続けていた

返答詩集 出逢いと旅 別れと続く道
「砂漠に咲いた一輪の花」

寂しいのは
手が空っぽな気がするから

何も触れられないからではなくて
何を掴んでも力なく零してしまうから

本当に空っぽなのは心の方
誰と出会っても分かり合えずに遠ざかってしまう

寂しいというだけで
生きている意味を見失ってしまいそう

瞬いた流れ星は
空が零した一滴の願いだったのかもしれない

涙が落ちた場所に一輪の花が咲く

降りしきる雨 咲き乱れるような満天の星空
痛みは花のように 悲しみは星のように

触れるのが恐くて 思い出は寂しくて
この世界に失望しても 光を見たのもこの世界だから

# 5
星の欠片 心の断片
二部 星と心
一章 心と鏡

空白
空のように壮大で
雲のように形を変え
吹き荒れる風のように自由で

休息
海のように青くて
光のように煌めいて
穏やかな波のような安らぎ

孤独
夜のように色を飲み込む
無のような闇を
月明かりが照らす

10

未来を照らすように
はためく旗が

胸の奥で 囁いている

勇気となって風となり
優しさとなって雨となり
歌は闇夜に光を指し示す

見えないから 不安に揺らいでも
確かに感じられる 炎の揺らめき

心から涌き出る言葉に耳を澄ませる

自分らしく生きようとする意志に秘めた
信じるものの重さに宿った

旗を掲げるように生きている

信じ続けた時が 打ち続けた雨のように
心に刻みつけた想いを 踏みしめて

旗を支える柱は揺らがない

11

木の幹が倒れるように 旗の支えが折れるように
信じられるものがなくなってしまったら

空の光は恐ろしく 未来は苦しく
見ていられない
自分に閉じこもっても 空っぽな気がした

力になっていた想いも耐えられなければ
肩には乗せられない重りでしかない

12

今まで辿ってきた数々の心の足跡を
白紙に書き込んだら地図になった

現在位置は
身体が立っている場所
心の地点

思いが届いたなら 心の一部になる
心と言葉が 触れて溶けて混ざり合う 出会ってきた心の軌跡

抗うように踏みしめて
必死で何かを掴んで
遙か先まで見つめて

失ったものも得たものも
心に宿していく

感情になって散って
思い出になって溢れて
夢になって瞬いて

触れたものを
確かめている

命の数だけ世界が犇めいて

鏡合わせのように映し出す

夕陽と朝陽が塗り替える今

心の世界を見るのは心だけ

詩人です。出版もしております。マガジンで書籍のご案内もいたしております。頂いたサポートは出版の費用にさせていただきます。