4 20 日記詩集  おまけトーク(気持ちが一番大事)




鳴り響く電話の着信音で彼女の手はとまった
キャンバスにやった手で電話を取る

電話の声がテナントの一部を貸し出す旨を伝えるが
彼女は上手く状況が飲み込めなかった

要領の得ない彼女に電話主が何度か確認してようやく思い出す
忘れていた 随分前に依頼したものだった
電話の向こうでは彼女が件の人物だと一致して安堵したのか
一息に時間や場所の詳細を告げる

反射的にメモを取りながら
本当は断ろうとしていた

自分の絵を置くことができる場面を想像せずにはいられず
遅れて感情がこみ上げてくる
沸き上がる喜びに彼女自身が驚いて
気づくのだった

まだ情熱を失ったわけではなかった
もう少しだけ続けられそうだった

画家である以上
絵に縋るしかないのだと彼女は悟る

自分には絵しかなく
生きる術であり 希望だった

「苦しい時に心の中で起こっていること」

この世界に生きることが苦しくて耐え難い時
心の奥底の深淵の世界に閉じ籠る暗闇

星を探し 暖かな風に出会い
雨に打たれながら 太陽を乞い
空から差し込む一条の光に導かれ
果てに断崖に咲く花を見つける

苦しみに耐えうる中に 自らの内側を耕し 育み
救いを求めるように 豊かな世界を築きあげようとする

苦しみは確かに心を豊かにしたかもしれない
必ずしも豊かさをもたらすものではなく
耐えられない心は内側から崩壊してしまう

外なる世界と内なる世界の狭間で揺らめくオーロラのように
揺らぎながら生きている

揺らぎの中に潜む煌めきと変化と可能性を信じて

命を持ったのなら
生きる先にどう在りたいかという問いかけがある
木が根を張るように
鳥が羽をひろげるように

命をどう使うのか どう生きるのか
自分だけの生きる道を探している
生き方とは 一つの回答

詩人です。出版もしております。マガジンで書籍のご案内もいたしております。頂いたサポートは出版の費用にさせていただきます。