あなたに届けたい言葉を探して 「許しへの道」




before

    一

それは子どもの頃の記憶

間違えて―また―間違えて

「どうしてそんなこともできないの」
「何度言わせるんだ 一回で覚えろ」

怒られては泣いて 泣いてはまた怒られて
そういう自分も嫌で仕方がなかった

でも本当は

「大丈夫だよ」て言って欲しかった
間違っても大丈夫なのだと教えて欲しかった

大人は怒ってそれっきり
でも子どもは心に棘が刺さったまま

残ったのはできるようになった自信なんかじゃなくて
できない自分は駄目な人間なんだという劣等感だけ

あの時の傷が残ったまま大人になって
大人になったら全部自分の責任

そんなの――ずるい……

あの時ああいう言われ方を 接し方をされなかったなら
この傷はなかったかもしれないのに……

今の自分とは違った人生だったかもしれないのに
もう誰を責めていいかも分からない

行き場のない想いを抱えて
生きるしかない

子どもの傷はずっと残る
大きくなっても小さい頃の自分が心の奥で泣いている

今から
ゆっくりでもいい
受け入れていけるだろうか

時間はかかるのだろう
それは心だから
目には見えないものだから

それは目を瞑って
どこかも分からない傷口に
絆創膏を貼るようなものだから

いつか許せる時がくるだろうか
あの頃の自分に出会ったら
きっとまだ泣いているのだろう

大きくなった自分が
この手で――君を
抱きしめてあげることはできるだろうか

痛かったね
辛かったね
もう大丈夫だよ

そう言えるように―なれるのだろうか
もしも過去の自分が泣きやんで笑顔になれたなら
その時過去が変わるのかもしれない…

思い出したくもないような過去が
今に導く道標のような過去に

その過去があったから
今の自分があると言えるような
それが許すということになるのだろうか

過去を許せた時
傷はきっと光になっている

その時から後ろを振り返るのをやめて
前に向かって歩いていける

    二

どうしてあんな人を許さないといけないの

そう思うなら許さなくていい
許せないでもかまわない

許すのは自分のためだから
過去の傷に流す涙をとめるために
過去より未来を見つめるために
そのための許しだから

許しとは救い

過去も 今も 未来も
私が笑顔でいられるために

between

「許しへの道」が長すぎる。確かにそれは長く険しい道のりだが、もっと端的な言葉で言い表せるのではないか。
あえて具体的なエピソードはいれない。
言葉を丁寧に重ねすぎているのでもっと隙間を空けて、想像の余地があってもいい。

after

    一

それは子どもの頃の記憶

怒られては泣いて 泣いてはまた怒られて
嫌で仕方がなかった 怒られることも そういう自分も

でも本当は「大丈夫だよ」て言ってほしかった

でも「できない自分は駄目な人間なんだ」という劣等感しか残ってなくて

傷が残ったまま大人になって
大人になったら全部自分の責任

もう誰を責めていいかも分からない

行き場のない想いを抱えて
生きるしかない

    二

それは子どもの頃にできた傷

今から
ゆっくりでもいいから
受け入れていけるだろうか

時間はかかるのだろう

あの頃の自分は
きっとまだ
心の奥で泣いているのだろう

抱きしめてあげることはできるだろうか

たとえ許せなくても
その過去があったから
今の自分があると思えるようになるだろうか

泣いている小さな自分が いつか笑ってくれるだろうか


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