それがそこにあるということ「檻」~「一本の木 ⅰ」


「一本の木 Ⅰ」


海を臨む 一本の木がある
痩せこけてもなお 立ち尽くしている

辺りの空気は空しく
空のよう

音もなく 風が吹いて
かさかさと葉が揺れる

葉は落ちそうで落ちず
必死にしがみつくかのよう

大自然の前では砂一粒と等しいかのように
大海原の前では蟻一匹と等しいかのように

まるで存在しないのと等しいかのようで 確かにそこにあり
存在するというのに 誰も気づかない

何のために生きているというのだろう

海の潮騒 凪いだ風
一つの実が 光を浴びて輝いていた



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