春夏秋冬 秋 Ⅰ
before
来た道を紅葉が彩る
かつての温もりはここにはないが
風にふわりと浮き上がる―木の葉達がさらさらと歌う
体は力を失った
そっと―風に足をすくわれて―倒れる―
一陣の風は
緑が抜け落ちつつある―葉を舞い上がらせる
一斉に風に乗った葉の中に
虚ろな眼を見開く
まるで時が止まったかのような
永い時の中で
葉が落ちてゆく―雨のように
―雪のように
手を伸ばした先を
木の葉たちが笑いながら躱していく
手は空を掴むように開かれていた
舞う葉が微笑むかのように
ひらりひらりと舞う
風に攫われて―空の彼方へ―
消えていく―
連れて行って…
伸ばした手は手遅れに空を切る…
…あんなふうに自由になれたら――よかったのに…
失うことが怖くてこの想いに自ら縛られている…
この寒々とした樹のように
―でもそれは自分で選んだことだった…
Between
ここまで歩いてきた道を、
行き来するようなところは廻る季節の中で、
道は変わらずとも、
風景が変わり続けるという不思議さ。
一期一会という一瞬の邂逅。
懐かしさと寂しさが同居する。
同じ場所。でも違う時空みたいな。
来た道を紅葉が彩る
かつての温もりはここにはないが
風にふわりと浮き上がる(―)木の葉達がさらさらと歌う
(体は力を失った
そっと―風に足をすくわれて―倒れる―:悲観的な描写は排除)
(一陣の風は
緑が抜け落ちつつある―葉を舞い上がらせる
一斉に風に乗った葉の中に
虚ろな眼を見開く)
(まるで)時が止まったかのような
永い時の中で
葉が落ちてゆく
―雨のように
―雪のように
(手を伸ばした先を
木の葉たちが笑いながら躱していく
手は空を掴むように開かれていた)
舞う葉が微笑むかのように
ひらりひらりと舞う
風にさら(攫)われて―空の彼方へ―
(消えていく―)
(連れて行って…)
伸ばした手は(遅れて)空を切る…
(…あんなふうに自由になれたら――よかったのに…
失うことが怖くてこの想いに自ら縛られている…
この寒々とした樹のように
―でもそれは自分で選んだことだった…)
「自由になれたら」、とか「自分で選んだこと」
とか全部言語化するのは蛇足ではないか。
結果として手には入ってない。という虚しさだけで十分ではないのか。
「雨のように」「雪のように」は並びを変える。
after
来た道を紅葉が彩る
かつての温もりはここにはなくて
風にふわりと浮き上がる
木の葉がさらさらと歌う
時が止まったかのような
永い時の中で
落ち葉が降り積もる
―雨のように
ひらりと舞う
思い出も一緒に
風にさらわれる
―雪のように
―空の彼方へ
伸ばした手が空を切る…
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