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【詩】#44 部屋ができるまで
ずいぶん時間がかかったけれど
ぼくの部屋ができた
部屋をつくり始めたのは1984年だった
そこから少しずつ ぼくを集めていった
あたりまえのように
年を重ねてしまうけれど
部屋をつくるのは
むずかしいことだった
かんたんに
時間は過ぎてしまうけれど
部屋のつくり方は
いつまでもわからなかった
たいせつなものとはなんだろう
いらないものとはなんだろう
ふたたび
部屋をつくり始めたのは1990年だった
なにを揃えればいいのか
わからなくて
きみの真似をした
なにを捨てればいいのか
わからなくて
ぼくの大学生が壊れていった
そして 1996年になった
すべて覚えているようで
すべて忘れてしまったのかもしれない
すべて忘れてしまったとしても
あの時の部屋には なにかがある
2001年からの部屋には たくさんの誰かがいた
あの部屋ではあまり眠れなかった
眠ることができなかった
そして
謝ることができなかった
謝ってもらうこともできなかった
2021年
ぼくはまた部屋を作り始めた
集めるのではなく
捨てること
ぼくにさようならをしていくこと
それが ぼくの
部屋のつくりかただった
やっとぼくの部屋ができた
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